研究課題
腸内細菌叢を構成する大腸菌などの菌種やClostridium perfringensなどの病原性細菌計9菌株を用いて、前年度に確立したスクリーニング法にて糖資化性試験を行い、難消化性オリゴ糖に関するビフィズス菌との競合性の有無を確認した。その結果、現在プレバイオティクスとして多用されているガラクトオリゴ糖はEscherichia coli ATCC 11775株およびC. butylicum ATCC 19398株、フラクトオリゴ糖はC. perfringens ATCC 13124株およびC. butylicum ATCC 19398株の増殖を促進することが分かり、ビフィズス菌の増殖を狙う糖の摂取がかえって病原性細菌を増殖させる危険性を孕んでいることが推察された。また、腸内細菌叢におけるC. perfringensの保有状況に個人差があることや菌株により表現型に差が存在する可能性があり、これらの細菌についても個人が保有する細菌における糖資化能を調べなければ、ビフィズス菌の増殖を促進する糖を正確に判定できないと考えられる。一方、前年度の結果でビフィズス菌の生育がよかった乳果オリゴ糖とミルクオリゴ糖において、腸内細菌叢構成菌および病原菌の生育は比較的悪かったことから、本研究において用いた8種の糖の中で乳果オリゴ糖やミルクオリゴ糖は最もビフィズス菌の生育促進に適していることが判った。さらに、被験者12名に協力していただき、ヒト糞便から分離した個人固有のビフィズス菌株の菌種同定および難消化性オリゴ糖の利用能試験を行った。ヒト分離ビフィズス菌株の菌種は個人によって大きく異なっていたが、これら分離株全体の傾向としては、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖およびミルクオリゴ糖に対する資化性が高いことが分かった。
すべて 2016
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The Journal of Veterinary Medical Science
巻: 78 ページ: 1831-1839
10.1292/jvms.16-0367