アルコール代謝によるタンパク質の変性を評価する目的で、アセトアルデヒド(AA)によって修飾したタンパク質(AA-タンパク質)に対する抗体の作製と機器分析による検出を行った。 抗体作製:AA-タンパク質をマウスに免疫し、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得ていた。しかし2016年の熊本地震で保存していたハイブリドーマを失ったため、2017年度に新たに作製を行った。AA修飾KLHを免疫したマウスの脾臓リンパ細胞をミエローマ細胞と融合し、AA修飾BSAと反応する細胞株を得た。腹水より精製したモノクローナル抗体は、AA修飾した様々なタンパク質を認識することが確認され、今後、免疫染色等で生体におけるAA修飾タンパク質を検出できると思われる。 機器分析によるAA修飾構造体の検出:AAによるタンパク質の修飾において、特にリジンが修飾されていることがアミノ酸分析による解析で確認された。そこでAAとCbz-リジンを試験管内で反応させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で生成物を数種単離し、精密質量分析装置でm/zを測定した。また学内でアルコール摂取前後のAA修飾構造体の測定に関する研究計画書を申請し、倫理委員会の承認を得た後、アルコール摂取の前後で採血を行って質量分析で測定した。その結果、上記数種のm/zがヒト及びマウス血清中から検出された。しかし数種のAA修飾構造はアルコール未投与の血清でも検出されたため、アルコール代謝以外からの生成の可能性、あるいは腸内細菌によって若干はアルコールが産生され、AA修飾構造体が生成した可能性も考えられる。 まとめ:本計画によってモノクローナル抗体及び機器分析でAA修飾構造を検出することが出来るようになった。熊本地震の影響で計画より1年遅れたが、ほぼ計画通りに研究は進んでいる。今後、アルコール摂取によるタンパク質修飾のメカニズムがより明らかになると期待できる。
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