熱中症の罹患者が増加している事を背景に、我々の先行研究では、熱中症の経験あり群で、24時間採尿により評価した塩分摂取量や食生活のバランスが悪い状態であった事から、24時間採尿により評価した日常的な栄養状態と熱中症との関連について検討を進める事となった。 1年目は、体育会系クラブに所属する大学生のうち、熱中症のアンケート調査が実施できた75名では、熱中症罹患率は約30%、うち重度である者は10%程度であり、これは年齢階級別・発生場所別患者数割合(2013年)の調査とほぼ変わらない結果であった。しかし、先行研究のように熱中症罹患者で食生活のバランスが悪い結果は得られなかった。次に新しい対象者として、関東地域のサッカー、ゴルフ強化チーム、バレーボール、バスケットボール、体操部などの協力を得て調査を進めた。2年目の協力者は232名(男子151、女子81)であった。熱中症の罹患率は男子で約30%、女子で約20%であり、国の調査の10代と同様であった。そして熱中症の有無による栄養状態の評価を行ったところ、1年目と同じような結果であった。3年目はサッカー、ゴルフの強化チームで再度、調査を行い、熱中症の発生状況の詳細なアンケート調査を追加して行った。 熱中症予防のために、スポーツドリンクや塩タブレットの利用が日常的な事がわかり、24時間採尿調査の食塩摂取量に影響を与える要因が多い事から、熱中症発症の有無と栄養状態の評価をするには、さらなる工夫が必要である。しかし、熱中症の正しい罹患率は、熱中症の症状を説明した上で評価をすることが重要なこと、またスポーツ集団では食塩摂取量が多過ぎる者がいるなど、今後の研究課題に繋がる発見があった。 熱中症予防を目的とした適切な塩分摂取量を評価する方法がないため、今後さらなる検討が必要となる。
|