本研究は、前期に、中学校理科を対象としたプログラムの開発を行った。中学校理科「科学技術と人間」の目標と正対し、単元内の他の学習内容との関連を明らかにしながら、研究推進のためのプログラムを開発することとした。くすり教育を中学校理科カリキュラムとして考案し、授業を通して検証することで、プログラムの有効性を検証した。中学生が座薬や腸溶剤を教材とした実験を通して、薬に潜む科学技術について考えることで、薬や薬の服用について実感を伴って理解できることが明らかとなった。さらに、薬が自然界に存在する生物から開発されることや、科学技術を駆使して開発されていることを取り扱うことで、薬の開発が科学技術や自然の保全と関連していることを捉えさせられることが明らかとなった。次に、後期には、高等学校理科(化学)を対象としたプログラムの開発を行った。実際にくすりを使用した実験を通して、代謝や吸収についての学習内容と密接に関連させたプログラムとすることを目的とした。化学の教科書が実社会・実生活との関連を重視したものとなり、光触媒、ファインセラミックス、染料、医薬品、高導電性高分子など、様々な物質からなる製品が実生活を豊かにしていることが示されているが、そのほとんどが事例の紹介にとどまっている。このような背景から、くすり教育が、医薬品教育だけでなく、科学的リテラシーの向上にも有効に機能するプログラムであると考え、アスピリン腸溶錠等を教材として、有機化学や高分子化学の単元で学ぶ学習内容と医薬品の適正使用を関連づけたプログラムを開発・実践し、その有効性を実証した。最終年度には、これらのプログラムの評価を行った。
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