研究課題/領域番号 |
15K12371
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根津 友紀子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00746779)
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研究分担者 |
山本 仁 大阪大学, 安全衛生管理部, 教授 (20222383)
大島 義人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (70213709)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リスクアセスメント / 実験作業 / 化学物質拡散 |
研究実績の概要 |
本研究では、大学実験室の特殊性に鑑みた合理的なリスク評価軸を探索するために、実験作業および実験環境と、トラブル事例から抽出される発生リスクとの関係を検討することを目的とする。現在までに以下の検討を進めている。
学生実験のトラブル事例解析:前年度に引き続き、学生実験の器具の払出簿データをもとにトラブル率と事故率の関係について検討した。有機実験、無機実験、物理化学実験、分析化学実験と実験ごとにトラブル率が異なるため、実験手順書のどこでトラブルが起きているのかについての情報を同時に取得することにより作業内容によるトラブル率の算出が可能であることが示唆された。従って、これらのデータを取得するためにトラブル報告書のフォーマットを作成した。 実験室における化学物質の取扱い方解析:実験室における化学物質の流れを追跡するために、RFIDでの検知範囲について検討を行い、検知できない範囲や状況について課題を抽出した。ビデオカメラを用いるなど実際の測定に向けて準備を行った。一方で、化学物質の流れを追跡するためのモデル実験室の候補として、いくつかの実験室を見学し、試薬庫や実験作業の内容について調査、ヒヤリングを行った。 共有空間である実験室における化学物質拡散・対流挙動の検討:CFDシミュレーションソフトを用いて、モデル実験室において廃液タンクや実験台での薬品使用を想定して計算を行った。気流の流れを追跡することにより、化学物質の拡散経路については計算的には理解するに至り、実験室の中で人が居やすい場所との関係から暴露リスクについて検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年6月30日から11月30日まで産休および育休を取得していたため、計画が大幅に変更になった。平成28年度に計画をしていた実験作業の非定常性を考慮した化学物質発生確率の定量化については平成29年度に検討することに変更した。その他の検討項目である、化学物質拡散と対流挙動の検討については、CFDシミュレーションなど計算的検討を進められたが、一方でCFDシミュレーションの結果を考慮して模型での測定を行う予定であったが、模型の細かい改良に時間を要したため平成29年度に測定する予定である。化学物質の取扱い方の解析においては、RFIDの検知範囲についての課題を明確に抽出し、また実際の測定実験室を選定する際のポイントなどの整理を行い、平成29年度に実際の実験室での測定する予定である。産休・育休の取得により、予定が大幅に変更になっているが、研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、下記の通りに進める予定である。 化学物質発生確率の定量化:実験化学講座の基本操作に掲載の有機化学実験をモデルにし、これらの操作の様子をビデオカメラで撮影し、容器から化学物質が拡散する恐れのある部分を発生点として、二次元、三次元的で空間的にマッピングする。これらの発生領域における発生点の数と総数から空間的な化学物質発生確率を算出する。 共有空間である実験室における化学物質拡散・対流挙動の検討:CFDシミュレーションで得られたデータと、前項の化学物質発生確率のデータをもとに化学物質の発生点をリアリティのあるものに近づけ模型での化学物質濃度測定を行う。 実験室における化学物質の取扱い方の解析:実験室での化学物質の流れを追跡するために、RFIDの他、ビデオカメラやその他の手法を用いて、実際の実験室で測定を行う。対象は、試薬瓶、洗瓶、サンプル瓶、ガラス器具などできるだけ化学物質の入る可能性のあるものにRFタグを添付し追跡するか、ビデオカメラ等でモニタリングする。得られたデータにより、部屋全体の化学物質の流れを定量的に評価する。 学生実験におけるリスク顕在化確率の算出:作業のどこでトラブルが発生しやすいのかをテキストベースで検討するとともに、他の標本集団の払出簿についても解析を進め、共通性や個別性について検討を行う。 これらの知見を組合わせることで、大学実験室での化学物質の利用に関した合理的なリスク評価軸について整理する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年6月30日から11月30日まで産休・育休を取得したため、研究計画が大幅に変更になった。実験作業の非定常性を考慮した化学物質発生確率を算出するために、有機実験の模擬操作を行うため各種ガラス器具が必要であるが、この検討を平成29年度へ変更した。また、実験室内での化学物質(試薬瓶、洗瓶等)の流れを追跡の本検討も平成29年度へ変更したため、RFIDシステムの購入が平成29年度に変更になった。このような理由から予算の使用計画を変更せざるを得ない結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に有機実験操作を模擬するために必要なガラス器具を購入する。今所持しているガラス器具で足りない部分を購入する予定である。RFIDシステムは既に持っているシステムを活用しながら、測定領域を拡大する目的で装置を増やす予定である。
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