旧富士山測候所は,閉鎖環境で冬場は電源がなく,気温は-20度近くまで下がる。この環境で,大学小型衛星の教育プログラムとして,模擬衛星を運用し、初期成果については昨年報告した。この模擬衛星Fuji-satの三号機は2016年夏季から、2017年に設置されている。1日に1度バッテリー電圧、放射線カウント数合計、雷放電パルス数の情報が携帯電話回線によって送られてくるが、装置内部にはSDカード保存により1秒サンプリングで時系列データとして記録されている。2017年夏季にこれらのデータを回収し、プロジェクトの評価を行った。詳細解析については、高大連携プロジェクトの一環として行った。その結果、2016年の9月から2月の放射線の3時間毎のカウント数と,気象庁が提供している富士山山頂の大気圧はおおむね逆相関であることがわかる。これは宇宙線が大気圧量によって吸収量が変動することが起因することを意味しており放射線計測は動作していたことは確認できた。しかし、雷放電パルスについては全く動作せず、閾値の問題か、装置の不動作かは現時点では判明していない。また、太陽光充電がされているバッテリーについても、2月下旬で、パフォーマンスが落ち、装置が停止した。今年度についても同様に、三号機の動作を2017年夏季より開始したが、毎日送られてくるデータは3月中旬に停止した。さらに放射線測定器が1月で停止しており、やはり不具合が生じている。今後はこれらの分析を行うことによって、どのようにすれば一年間動作する装置が構築できるかの検討と、このための教育方法について検証する。
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