本研究の目的は,eラーニングによる教員研修システムを融合した,気象に対する児童生徒の科学的な思考力を育成し,理解の深化を図るデジタル教材を開発することである。具体的な研究項目は,①学習に適した気象事例の調査,②気象デジタル教材の開発,③eラーニングによる教員研修システムの構築,である。平成29年度は,研究項目①について以下の成果を得た。小学校第5学年「天気の変化」の単元における雲の観察に関する学習に関連して,2010年-2016年の7年間について,東京,大阪,福岡における天気ごとの雲形の出現頻度とその季節変化を調べた。何れの地点においても,積雲と高積雲の出現率が天気によらず高く,また巻雲の出現率が雨以外の天気で高かった。これらの主要な結果は,季節によって変化しないものの,快晴や晴れでは,高積雲の出現率が4月よりも10月の方が高く,薄曇りでは,巻層雲の出現率が10月よりも4月の方が高いことが明らかになった。研究項目②と③については,平成27年度の研究成果である大阪教育大学における雲の観測結果に基づき,小学校教員向けの雲の観察に関するeラーニング教材の開発を行った。教材の開発に当たっては,インストラクショナルデザインのADDIEモデルを用いた。晴れとくもりについて,出現頻度の高い雲形の組み合わせを示し,教材で学習した内容を授業実践に生かしやすいように配慮した。また,平成27年度,平成28年度に制作したデジタル立体地球儀「ダジック・アース」の小学校向けコンテンツを,小学校教員を対象とした研修に活用した。
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