本研究は、日本における宇宙教育の展開に向けて、国内の宇宙教育の現状と課題の把握、欧米の事例や動向の調査、それらを踏まえた教育プログラムの開発・試行等を行うことを目的として実施した。 2015年度には、(1)日本の中・高等学校における宇宙教育の現状と課題の把握を目的とした教員へのアンケート調査、および (2)宇宙教育プログラム開発の予備検討等を行った。成果概要は2015年度実施状況報告書に記載したが、特に(1)から、中学校教員は宇宙に関する授業を行う上で、「空間的な思考が苦手な生徒が多い」こと、「観測が難しい」こと等を課題と考えている場合が多いことが明らかになった。 2016年度には、(3)上記の結果とバーチャルリアリティ(VR)技術の普及を踏まえ、国立天文台4D2Uプロジェクトにより開発されたソフトウェアMitakaのVR版を教材として、バーチャルな宇宙を自由に移動・観察できる機能を利用した教育プログラムの具体的検討を行い、同プロジェクトの研究者と神戸大学附属学校教員の協力のもとで試行実験を行った。これを通じて、VRを利用した教育プログラムを学校で実施する場合の技術的課題、教育プログラムの本格的検討・開発に向けた課題等が明らかになった。また、(4) Texasで開催された宇宙教育に関する会議に参加し、米国における宇宙教育の現状について調査を行った。これを通じて、米国の宇宙教育において、有人宇宙探査が大きな役割を果たしていること、宇宙航空産業による教育への支援が充実していることなどの他、人工衛星等を教材とした多様な教育プログラムの可能性などが明らかになった。この他、日・米・欧州の中核宇宙機関等による教育の取組について、概観と比較を試みた。上記(1)、(3)の成果は、米国で開催されたLunar and Planetary Science Conferenceにおいて発表した。
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