本研究では,問題解決能力に関してさほど優れていない「二番手」以下の学習者に着目し,その問題解決能力を伸ばす学習方法の開発を行ってきた. 平成28年度までの研究結果から,卓越した学習者と二番手以下の学習者との顕著な差は,多角的視点による検討に必要な初歩的な思考,すなわち「場合分け」の有無であった.卓越した学習者には,「最終的には質の高い成果に至るが作業は遅い」タイプも考慮しており,当該タイプも場合分けはできていた. 以上の知見を元に,場合分けを行わせる以下の2種類の学習方法を開発した.1つは小集団の協働学習におけるリレー式の協議方法であり,与えた検討課題に対して1人ひとり意見を出させ,前の発言者の意見に自分自身の意見を追加させていく合意形成方法である.卓越した学習者が存在しない小集団において場合分けが観測され,また,従来の誰もが自由に意見を出し合う協議方法と比較して,小集団の各メンバーの思考が可視化される効果も認められた.もう1つの学習方法は,検討課題を2分割して具体化していく発想法を教示したうえで,意味の繋がる複数の主張を提示し,その主張の根拠を考察させる演習方法である.本演習は協働学習ではなく学習者個人を対象としており,場合分けの例示をすることによって,演習時間の中で概ねの学習者は場合分けをすることができていた.本方式はレポート執筆講習会における演習として実装することができ,成果は平成29年3月開催の大学教育研究フォーラムにおいて口頭発表を行った.
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