研究課題/領域番号 |
15K12392
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
川添 充 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (10295735)
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研究分担者 |
岡本 真彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (40254445)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 数学教育 / 高等教育 / 線形代数 |
研究実績の概要 |
27年度に行った調査のデータについて、とくに、同一平面上にない3本のベクトルの一次結合が空間全体を生成することをイメージすることが困難な学習者の認知に着目して、インタビュー調査のデータを詳しく分析した。その結果、これらの学習者は、3本のベクトルがつくる図形を部分的にイメージし、そのイメージを延長させたり間を埋めたりして徐々に膨らませていって最終的に空間全体を埋め尽くすことを理解していること、また、その過程には、2本の作る平行四辺形とそれに3本目を加えて平行六面体になったものが次第に大きくなって全体になるようにイメージするタイプ、3本がつくる三角錐から矢印の方向に立体をのばしたものをイメージして次いで矢印の反対向きの立体をイメージするというふうに順番にイメージしていくタイプ、2本がつくる平面をイメージしてそこに3本目も加えたときに3本目の周りに広がっていくようにイメージするタイプの3つのタイプがあることが見出された。さらに、負の係数を含む一次結合のイメージが十分でないこと、図にベクトルが乗っている平面を描くとその平面のイメージに空間のイメージが阻害される学習者がいること、などの知見が得られた。28年度の後半には、27年度と同じ調査試験(ただし問題の順番をランダムに入れ替えたもの)と線形代数の抽象概念が関わる調査問題を用いて、3本の空間ベクトルの生成する図形のイメージが正しくできることと線形代数の抽象概念の理解との間の相関を調べるための調査試験を実施した。この調査試験の実施時期が線形代数の授業の学期末であったため、28年度中にはデータ分析までは終えられなかった。この調査データの分析は29年度の前半に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
メタファーを人間の概念理解の基盤におくレイコフの仮説によって線形代数における一次独立・基底・次元の概念理解がどのように説明されうるのか、あるいは、その仮説の限界がどこにあるのかを見定めるための作業が困難を極め、現状では、レイコフがヌーネスとともに「数学の認知科学」で示した、代数学の構造を捉える認知の概念ブレンドによる説明以上のことを明らかにできていない。
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今後の研究の推進方策 |
27年度と28年度に収集・分析したデータに基づいて、空間ベクトルで視覚化された概念の認知と一般の抽象ベクトル空間の概念理解との間の関係についての仮説を立て、身体化された概念の理解を抽象的な概念理解に拡張する理解モデルを構築する。この作業を9月までに行い、10月からの授業でその理解モデルの妥当性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査データから十分な結果が得られず、国際学会への投稿を28年度は見送ったため、投稿準備のための論文校正費や発表のための学会参加費や旅費を支出しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
数学教育や認知科学の国際学会への参加費として使用する。
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