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2016 年度 実施状況報告書

初中等教育における放射線計測実験の定量化・精密化とその教育効果の研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K12393
研究機関公立鳥取環境大学

研究代表者

足利 裕人  公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (00612342)

研究分担者 中川 和道  神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (00134403)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード放射線 / 教材 / 半減期 / 計測 / ベータ線 / アラニン / 定点観測
研究実績の概要

(1)温泉水の中等学校教材化:身近な温泉水や温泉沈積物を3インチNaIシンチレーションカウンターで計測し,半減期の決定や,ウラン系列・トリウム系列のガンマ線スペクトルの観察による線源の同定を行っている.これらの安全で入手しやすい放射線源は,中等学校の原子分野の授業での線源として利用可能であり,霧箱の線源としてだけではなく,放射線の強度の時間変化等,定量的測定を可能にした.
(2)ベータ線の磁気偏向によるエネルギー分布の測定:90Sr・90Yの線源からのベータ線を,ネオジム磁石間の一様な磁界内を通し,偏向したベータ線の角度分布をガイガーカウンターで計測する.ベータ線のエネルギーにより偏向角が異なるため,エネルギー分布が予測できる教材となる.線源に閃ウラン鉱を用い,紙,アルミ板等で遮蔽することにより,アルファ・ベータ・ガンマの各放射線の違いが分かる中等学校教材にも発展できる.
(3)アミノ酸の赤外吸収スペクトルを利用したベータ線線量計測の試みⅡ:アラニンγ線線量計が実用されている.ベータ線の簡便な計測を目指して昨年度から,アラニン薄膜に学生実験用90Sr線源からのベータ線を照射して赤外吸収スペクトルの変化を調べてきたが,経時変化によるばらつきを越える変化はまだ検出できていない.
(4)福島の放射線量定点観測6年目:福島県川俣町と飯館村の境に位置する花塚山で放射線量定点観測6年目を経過した.登山路に隣接し除染されていない場所として典型的な観測点である.放射線量の時間減衰は,セシウム134とセシウム137の初期放出量を等しいとおいた理論値と見事に一致しており,教科書に使える結果として利用価値が高い.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トリウム系列の湯ノ花を示す秋田の玉川温泉の温泉水を計測し,高温の温泉ほどトロンの含有が少ないことや,高温の温泉水の測定では,NaIシンチレーターの動作が変動すること,温泉水中にはトリウム系列はほとんど含まれず,早期に沈積してしまうことが判明した.このため,恒温容器にシンチレーターを入れたり,泉源のトリウム系列沈積効果を調べるため,沈積物収集用の素焼の板を三朝温泉の各泉源に設置している.また,トロンの半減期が55秒と短時間であるため,すばやい測定が望まれる.泉源近くで汲んだ温泉水からトロンを取り出し,V字の飛跡の時間変化を観察している.
ベータ線の磁気偏向の磁場依存性を精密に測定するため,さまざまな磁力の強さのネオジム磁石を用いて測定を行っている.装置を工夫し,中等学校の教具として利用できるよう研究中である.
アラニンγ線線量計による赤外吸収スペクトルの変化を調べてきたが,経時変化によるばらつきを越える変化はまだ検出できていない.アラニンγ線線量計がアラニンのブロックを用いているのに対し,赤外検出用の蒸着膜ではベータ線が通り抜けてしまうためとみられる.
花塚山で放射線量定点観測はラザフォードや,後のピラールが予測した結果を示していることが分かる.

今後の研究の推進方策

トロンとラドンの計測を行うラデュエットを,三朝の大橋旅館に設置した.これによって,トロンの湧き出しの絶対量を計測し,トロンの湧出後の推移を教材化する予定である.三朝温泉の泉源のトリウム系列由来のものは2/3程度あることが判明し,さらに詳細なぷんぷMAPを作成する.NaIシンチレーターによる系列の同定のみならず,半減期を求めたピーク値の強度測定の手法を用い,各泉源のトリウム系列とウラン系列の物質の存在費を計算し,総合的な温泉水中の放射線の中等学校教材を作成する.
ベータ線の磁気偏向による教材を,指導方法とともに精選し,物質による吸収や遮蔽等も含め,放射線の総合学習ができる教材とする.
アラニンγ線線量計に,ベータ線に加えてアルファ線による照射を検討してみる.ベータ線やアルファ線が測定できる線量計として実用化を進める.

次年度使用額が生じた理由

温泉水中のトリウム系列の測定結果が予想と異なり,解析に時間を要した.新たな測定技術の開発が次年度(2017年度)にずれこんだため.
また,ノートパソコンが故障し使用不能になったが,故障の時期が予算執行時期とずれたため,次年度(2017年度)になった.

次年度使用額の使用計画

2016年度購入予定だったノートパソコンを2017年度初旬に購入し,大容量のデータ解析を行う計画である.また,精密測定用の周辺機器を強化し,学会発表を増やす計画である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] トロン温泉の教材化2017

    • 著者名/発表者名
      足利裕人
    • 学会等名
      応用物理学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2017-03-14 – 2017-03-17
  • [学会発表] 三朝の温泉水を用いた214Pbの半減期の教材化2016

    • 著者名/発表者名
      足利裕人
    • 学会等名
      日本物理教育学会
    • 発表場所
      新潟大学
    • 年月日
      2016-08-06 – 2016-08-07

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公開日: 2018-01-16  

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