学習指導要領で放射線の扱いが重視され、日常的に接する放射線を自ら定量的に測定し、その数値を正しく解読・評価し、リスクを判断する能力の育成を初中等教育で実践 する教材の開発を目指した。また、初中等学校の理科教員が文科省の放射線副読本を用いた授業を展開するときに感じる障壁の高さを下げ、困難を和らげる定量実験を目指し以下の実験を開発した。 ①γ線のエネルギースペクトルによる放射線核種の同定、②外部放射線から身を守る三原則とβ線とγ線の遮蔽の違い、③GM管とシンチレーションカウンターによる放射線環境 ④霧箱中の飛跡で求めるβ線のエネルギー分布の測定、 磁場によるローレンツ力を受けて回転する電子の速度の計算には相対論が必要で、初中等教育に相対論を持ち込む教材となる。⑤磁場による偏向を用いたβ線のエネルギー分布の測定(H29)、⑥三朝の温泉水中のトロン(ラドン220)を用いた鉛212の半減期の測定(H29) 実験装置の開発として「アミノ酸の赤外吸収スペクトルを利用した放射線線量計測の試みⅡ」を、アラニンγ線線量計が実用されていることにヒントを得て、アラニン薄膜に学Sr90線源からのβ線を照射してきたが、赤外吸収スペクトルに有意な変化が検出できなかった。H29年度はα線源の利用を検討したが、適切な線源の発見は将来の課題となった。福島の放射線量定点観測」は7年目となった。福島県川俣町と飯館村の境の花塚山で定点観測7年目を経過した。除染されていない場所の放射線量の経時変化を測定するうえで典型的な観測点である。放射線量の時間減衰はセシウム134と137の初期放出量を等しいとおいた理論値と一致しており、教科書に使える結果として利用価値が高い。なお、3年間の研究成果をまとめた「文部科学省放射線副読本を活用した授業のための実験教材および教師用テキスト」を出版し、配布している。
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