研究課題/領域番号 |
15K12394
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
根本 泰雄 桜美林大学, 自然科学系, 准教授 (30301427)
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研究分担者 |
関根 秀太郎 公益財団法人地震予知総合研究振興会, その他部局等, 研究員 (90455254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地震 / 地震に伴う地鳴り / 理科 / 教材開発 / 高等学校 / 東京大学地震研究所筑波地震観測所 |
研究実績の概要 |
地震波形と地震に伴う地鳴りとの関係という,科学的に未解明な課題に基づく高校「理科」の教材開発を行うため,地震波形と地震に伴う地鳴りとの同時観測を行うための予備観測用機材の開発を進めている.初年度に実施した調査・研究は次の(1)~(4)の通りである. (1) 予備観測に向けた,安価な既製部品を組み合わせることによる観測機材の開発と試作機の構築 (2) 試作した観測機材の一つを用いて東京大学地震研究所筑波地震観測所にて予備観測の実施 (3) 種々のマイクロフォンの性能確認試験の実施 (4) 教科書などの教材の分析 試作機は安価な既製部品の組み合わせにより作成した.そのうちの1台を東京大学地震研究所筑波地震観測所に設置し予備観測を継続中である.予備観測を始めてから目的となる有感地震の記録を回収できていないため,地震記録と地震に伴う地鳴りの音記録との同時集録が成功しているか本報告作成時点で確認できていない.また,予備観測と並行して,種々の安価なマイクロフォンを同時に用いて,本研究目的に適する安価なマイクロフォンの選定を行うための性能確認試験も進めている.さらに,地震動センサーとして手作り地震計を用いる可能性も探るため,手作り地震計の試作と性能確認試験も進めている. 地震記録と音記録とを同時に集録した記録を手元に得ていないため初年度の研究結果を評価することは難しいが,教材として生徒による記録収集をする際に,安価にA/D変換を行う方法を2年目には構築する必要があることが課題であると判明した.今後の課題としては,記録を得ることと併せて,安価なマイクロフォンを用いた場合の記録収集の限界を定量的に評価すること,A/D変換を安価に行う方法を構築すること,が挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定より進捗がやや遅れている.これは,予備観測を開始するための予備観測用機材の開発,試作機の作成が,予定よりも大幅に遅れたことが一番大きな原因である.なぜなら,研究代表者,研究分担者,研究協力者(3名)ともに地震学を背景としていることから,地震動センサー(地震計)に関しては専門的知識を持ち合わせているが,音響学や音センサーの専門家ではないため,音センサーの選定等に対して研究計画時に想定した以上の時間を費やしたことによる.しかしながら,初年度中に試作機による予備観測を開始することができたこと,あわせて,本観測に向けての各種マイクロフォンの性能確認試験,および地震に伴う地鳴りを記録するための各種増幅器の性能確認試験を並行して進めていることから,2年目の上半期終了時点までに地震記録と地震に伴う地鳴りの記録とを同時に複数回にわたり観測することができれば,初年度での遅れを充分に取り戻せると考えられる.なお,本報告作成時点にて,3月22日14時34分頃の地震,3月26日22時33分頃の地震,3月31日11時48分頃の地震,の3地震に関して地震記録および音記録が同時に収録されていることが期待されているが,記録回収日を確定した時点で平成28年(2016年)熊本地震などが発生したため回収日を延期せざるを得なくなった.そのため,本報告作成時点では記録を回収するための日程を再調整中であり,残念ながら現時点では期待する記録が収録されているかどうかの確認は取れていない.
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今後の研究の推進方策 |
本観測に向けての各種マイクロフォンの性能確認試験,および地震に伴う地鳴りを記録するためのマイクロフォン用各種増幅器の性能確認試験を引き続き進める.あわせて,手作り地震動センサーを記録収集のためのトリガーとして用いるため,手作り地震動センターの改良,および新しいアイデアによる地震動センサーの新規作成も行っていく.また,東京大学地震研究所筑波地震観測所にて試作機を用いて行っている予備観測も引き続き行っていく.現在は試作機がインターネット等の通信回線に接続されておらず,オフラインで観測を行っている.従って,試作機の動作確認や記録の回収等は,現地の地震観測所に行かなければならない.現在の状況では地震発生直後に記録の収録状況を確認できず研究上非効率であるため,早々にインターネットへ接続できるように試作機の改良を行う.それに伴って,同観測所へ出向かなくても記録の吸い上げができるようにするための改良も同時に進める予定である.なお,得られた記録は回収され次第,逐次的に解析される.また,予備観測にて得た記録の解析結果も踏まえつつ,同時並行的に地震動センサー部以外は既成部品の組み合わせから構築する本観測機の開発を進める.本観測用の機材は,整い次第同地震観測所に設置し,試作機との並行観測を開始する予定である.また,現時点では開発が遅れている産学協同による観測機材の開発も試作機で得た記録の結果に基づき進め,当該観測機材による観測を本研究2年目中には開始できるよう進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況での理由を記す欄にも記述した通り,研究計画時に想定した以上の時間を音センサーの選定等に費やしたため,試作機による予備観測の開始が予定していた時期より大幅に遅れることとなった.その結果,試作機のメンテナンスおよび収集した記録回収のために東京大学地震研究所筑波地震観測所へ行く回数が予定より大幅に少なくなった.それに伴い,予定していた交通費および収集した記録を保存するために必要となる外部記憶媒体等の購入を初年度に行う必要がなくなった.さらに,試作機の作成が遅れたことから本観測用の機材の開発開始も遅れ,その結果として同機材の開発に必要な部品の購入を初年度に行わなかった.以上のことが,次年度使用額が生じた理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
会計上は初年度に使用したこととはならなかったものの,すでに本観測用の機材開発に必要な部品の購入を昨年度末より行っている.本研究を初年度に予定していた研究計画の遅れを取り戻して遂行していくため,本年度は当初の予定通り本観測用機材の開発および産学協同による観測機材の開発のために使用する計画である.また,学校での教育用教材としての研究成果をまとめていくために教科書などの既存教材の分析も進めているが,これまでの分析結果を取り纏めて第35回萬国地質学会議で発表を行う予定である.既に予稿は受理されており,この発表を行うための旅費の一部として計画通り使用予定である.また,試作機によって得られた記録に基づく研究成果の発表に関しては,(公社)日本地震学会2016年度秋季大会にて発表予定であり,そのための旅費としても計画通り使用予定である.
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