研究課題/領域番号 |
15K12402
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
小田 明範 熊本高等専門学校, 機械知能システム工学科, 教授 (60224234)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 霧箱 / 飛跡 / 放射線教育 / 理科教材 / 拡張現実感技術 |
研究実績の概要 |
本研究では,学校現場での放射線教育に利用可能な,生徒等が興味を持ち学習効果が高まることが期待できる放射線教育教材の開発を目指す.そのために,AR(Augmented Reality,拡張現実感)技術やOpenCV(オープンソースのコンピュータ・ビジョン・ライブラリ)などの画像処理技術を用いる.今年度は,AR技術を利用して放射線の物体の透過性を理解する簡易的なプログラムやキャラクターを用いたゲーム性のあるプログラム,霧箱からの放射線の飛跡を自動検出・計数するプログラムなどの試作教材を作成した. 奈良先端大学院大学の加藤によって開発されたARToolKit(ARを実現するC/C++用のプログラミングライブラリ)を用いて,ノートパソコンにUSBカメラを接続し,幾つかのマーカを利用し,放射線の物体の透過性を理解する簡易的なプログラムやキャラクターを用いたゲーム性のあるプログラムを制作した.α線,β線,γ線等の放射線を仮想的に発生させ,壁(遮蔽物質)によりその透過を学習できるようにした.また,キャラクターをある地点まで移動させるゲーム性を有するプログラムを作成した. 平成27年度に購入した高感度霧箱装置を用いて得た放射線の飛跡(ひせき)の動画に対して,OpenCVによる画像処理(二値化処理, Cannyアルゴリズムによるエッジ検出,確率的ハフ変換による直線検出,など)を適用し時間依存で飛跡を“計数”するアプリケーションを作成した.熊本地震の影響で5月開催が11月に延期して実施された学校イベント「おもしろサイエンス・わくわく実験講座2016 in八代」において,“計数”アプリケーションを来場者に体験してもらった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現時点での進捗状況として「遅れている」と自己評価する.その理由について,以下に記す. 本研究では,小中学校および高専の生徒等への理科教育への適用を想定し,受講生が興味を持つ,PC 等の情報機器を利用した魅力的な放射線教育理科教材の開発を目指している.そのために,本予算で購入した霧箱装置で得られた放射線の飛跡の動画をOpenCVにより画像処理し,時間依存で放射線強度(飛跡の数)を“計数”することに取り組んだ.鮮明な飛跡の場合,その認識はほぼ適切にできているが,より精度や高い画像処理法の検討が必要である.また,検出に用いる閾値等のパラメータの最適化や,講義,実習等に用いるためにユーザーインターフェースの改良や霧箱装置でのリアルタイムでの“計数”の最適化が必要である.精度の高い画像処理のためには,霧箱装置に対して放射線の飛跡がより鮮明に見えるような工夫の検討も必要である.AR技術を用いた放射線教育教材についても,生徒等が興味を持ち学習効果が高まるような一層の工夫が必要である.中学3年生を対象として1回の出前講義を行ったが,この際,この試作教材を利用するにはいたっていない(ドライアイス冷却の霧箱やゲルマニウム型核種分析装置等による放射線教育を実施).当初の予定では平成28年度に中学校での出前授業等での利用を予定していたが,プ出前授業等で利用可能なレベルまで作成したプラグラムが至っておらず,全体的に遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
本予算で購入した霧箱装置で得られた放射線の飛跡の動画をOpenCVにより画像処理するシステムを,放射線用理科教育の教材として完成させる.そのために,より精度の高い画像処理法の検討とその既存プログラムへの組み込み,時間依存で放射線強度(飛跡の数)を“計数”するプログラム,ユーザインターフェースの改良などを行う.AR技術を用いた放射線教育教材についても,生徒等が興味を持ち学習効果が高まるような工夫をはかる.また,平成28年度に購入したVR機器(HTC ViveやOculus Rift)による放射線教育教材の利用なども並行して検討する. これらにより,小中学校の生徒等の理科教育で受講生が興味・関心を持つ,魅力的な放射線教育理科教材の開発を行う.実際に出前講義等で利用し受講生の意見をきく.また,これまでの成果を紀要や学会等での発表を目指す. なお,放射線用のシミュレーションソフトウエア(Geant4)を利用した放射線の挙動を体感できるシステムについては行わないこととした.
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次年度使用額が生じた理由 |
出前授業等で利用するための放射線教育教材用のアプリケーションの開発が遅れたため,当初購入を予定していた出前授業用の機材(PCなど)の購入をとりやめ,別の機器(VR機器やそれを利用するためのスペックを有するPC)の購入を行ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の助成金とあわせて,購入済みの機器(VR機器等)をより有効にするための物品や,研究発表ための旅費等に利用を予定している.
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