研究課題/領域番号 |
15K12408
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
柏原 昭博 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10243263)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育工学 / 気づき / 擬似力覚 / 足場かけ / タブレットツール |
研究実績の概要 |
学習者自ら考えようとするきっかけを意図的に作りだし、学習プロセスへの主体的・積極的な関与を促す学習環境の開発を目的として、平成27年度はタブレットメディア上においてテキスト教材から学んだ知識を知識マップとして作成させ、そのタッチ操作に応じて擬似力覚を呈示するとともに、教材やその学び方への気づきを高めるタブレットツールを開発した。具体的には、次に示す(1)~(3)を実施した。
(1)擬似力覚効果モデルの構築:学習者による知識マップ作成操作に対する擬似力覚の呈示から、その呈示意図の探究を促し、知識や教材を学ぶ方略の気づきを提供するために擬似力覚効果モデルを構築した。まず,気づきを与えたい知識(属性や関係性)と教材を学ぶ方略を分類した。次に、CHIや力覚インタフェイス研究の最新動向を調査して、知識マップの基本オブジェクトごとに呈示可能となる擬似力覚と示唆可能な気づきを理論的に検討した。また、擬似力覚呈示からその意図の探究可能性、および気づきの可能性を検証し、擬似力覚と期待される探究プロセス・気づきとの対応関係を整理した。 (2)タブレットツールの開発:まず、テキスト教材において気づきを与えたい基本オブジェクトに擬似力覚情報を埋め込むためのオーサリング環境を構築した。次に、タッチ操作によって知識マップ作成を支援するユーザインタフェイスを開発し、擬似力覚効果モデルに基づいて学習者によるマップ作成のためのタッチ操作に擬似力覚を呈示する機能を実現した。 (3)タブレットツールの有効性評価:開発したタブレットツールによる擬似力覚呈示の有効性を調べるケーススタディを実施した。その結果、モデル通りに擬似力覚の呈示意図が探究され、かつ教材中の知識に対する気づきが高まる可能性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
擬似力覚呈示を実現するタブレットツールの開発は、擬似力覚効果モデルの構築とともにこれまで順調に進展してきた。一方、学習者自ら気づくプロセスを促進するために、呈示された擬似力覚の意図を探究する足場を提供する予定であったが、擬似力覚効果モデル構築過程で、擬似力覚からその意図の探究が引き起こされる可能性をまず見極めることが重要であると判断し、ケーススタディの実施を優先させてツールの有効性評価を行った。その結果、擬似力覚呈示意図の探究が進むケースと進まないケースがあることを確認することができ、意図探究支援の必要性を明確にすることができた。また,探究支援して、擬似力覚呈示箇所とテキストとの関連性を示唆することが重要であるとの知見を得ることができた。 以上のことから、研究はほぼ計画通りに進捗しており、現在の達成度を(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発したタブレットツールの継続的な利用を通して、主に学習プロセスへの主体的・積極的関与の促進、知識に対する気づきの点からツールの有効性を評価する予定である。また,その結果と、本年度得られた擬似力覚呈示意図の探究支援に関する知見をもとに、学習者による知識マップ作成プロセスに足場を提供することで、擬似力覚呈示意図の探究を促し、学習プロセスへの関与を高めるメカニズムを開発する予定である。同時に、得られた研究成果を広く公表する予定である。
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