平成29年度は,本課題で平成27~28年度に取り組んだ学習インタラクション環境の構築によって得られたシステムを利用して,学習者が教授者の立場になった際の学習への動機付けの効果をフィールド実験によって検証することを試みた. なおフィールド実験に先立って,期待されるインタラクションが実際に生じる可能性をコンピュータシミュレーションによって検証を行った.そこで学習の中でも協調学習に焦点を当て,協調学習に参加しない学習者の存在を問題として,それを解決するための学習のサイクルモデル及びそのサイクルモデルを実行するための支援システムを作成した.その結果,シミュレーションでは,高い自尊感情をもつ学習者を多く有する学習者集団ほど掲示板環境が提案システム環境に比べ,課題の進捗の上がり方が早いこと,また,中低程度の自尊感情をもつ学習者を多く有する学習者集団ほど掲示板環境が提案システム環境に比べ,上昇が緩やかになるのも早いことが明らかとなった. この成果を受けてフィールド実験を行ったところ,学習者のコミュニケーション手法によって自尊感情に差が生じることが判明した.さらに,追実験を行うことにより学習者の学び方,コミュニティ内で行われる情報伝達の手法に差が生じることが判明した.これにより,プログラミング環境における承認欲求の変化のあり方を示すとともに,承認欲求を満たす要素を示すことができた.この研究は,様々な分野において質問と応答の手法が変化し学習者の自尊心が上昇していくことで,自ら考え,そして教え合い成長していく社会へ貢献することができると考えられる.
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