スポーツ指導では慣習的用語やオノマトペが利用されてきたが,それらの意味することが被指導者には伝わらないケースが増加している.スポーツ指導者には,学習者の年齢やレベルに応じて,学習者に思考や運動の仕方をわかりやすく説明するための言語技術が求められている.言語技術とは,思考を論理的に組み立て,相手が理解できるようにわかりやすく表現する技術であり,あらゆる教育・職業のベースとなる.そのため,あらゆる教育機関・職種において言語技術の向上が求められている.昨今の読解力低下問題は言い換えると言語技術不足問題ということになる. 我が国の教育機関では言語技術教育はほとんど実施されていない.一方,欧米では子供の言語技術教育において絵を利用した手法が用いられてきた.この手法では,子供に絵のテーマや絵に描かれていることをしながら分析させることで言語技術を向上させている.この手法は絵の分析に教材として子供が興味を持ちやすい絵本を用いることが多い. しかしながら,人の運動動作などの情報は絵本からでは得られない可能性がある.そこで本研究では,絵本の代わりに言語技術教育の教材としてヒューマノイド型ロボットの動作を利用するという手法を提案した.提案手法は,人の運動動作をロボットで表現し,ロボット動作のテーマや動いている関節などを,学習者に分析させることによって,学習者の言語技術を向上させるというアプローチである.ロボットを利用する理由は,ロボットがコミュニケーションを促すツールとして効果が認められているからである. 本研究では,既存手法と提案手法の効果を発話分析により比較した.比較結果により,言語技術教育の教材としてロボット動作を利用することの有効性を示した.また,連続写真や動画などロボット動作を見せるメディアの違いによる効果の差も検証し,ロボットの動作を分析することの有効性を示した.
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