価値感,信念を異とする外国人とのコミュニケーション,異文化理解を対象とした自己内対話の鍛錬プロセスは,研究活動における批判的思考におけるそれと類型性を有することから,研究活動サイクル支援システムと連携させることで,これまで得られた知見の新しい分野への展開可能性について検討した. 研究活動ドメインにおける活動を「メタ認知活動」「認知活動」「行動」に分類する形で体系化し,体系化した概念に信念対立解明アプローチの思想を踏襲する形でこれまで整理した概念を関連付けた.そして,バーバラミントのピラミッド原則に準ずる思考の可視化環境において,信念を揺さぶる問いを研究実施文脈でシステムから出力する機能を実装した.より具体的には,過去の自分の思考を振り返る問い,今考えていることの将来の自分の思考への影響の検討を促すことで,現在・過去の自己の思考を再吟味させる問いの生成機能を備えた.これを約1年にわたり長期運用し有用性を確認した.また,実装したシステムは他大学の複数の研究室において利用してもらい,有用性を確認した. さらに,歴史学習の文脈においても,ビゴーの風刺画に付与したAOIと風刺画セマンティクス,質問生成オントロジーに基づいて,学習者の思考文脈に追従する形で,歴史的解釈を深める問いを生成する機能を実装した.その結果,信念を揺るがす問いを与えることにより,歴史の学習観の変容が促されることが示唆された.信念を揺るがすためのインタフェースの構成法,これまでに開発した異文化理解促進オントロジーとの連携と概念の類似性分析についての検討が今後の課題である.信念対立解明アプローチの汎用性についても,今後ドメインを広げて検討していきたい.
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