大学への進学層が多様化する中、大学の基礎教育は、様々なレベルの学生に対応することが求められる一方で、専門教育が前提とする一定レベルの知識の習得も図らなければならないという困難な問題に直面している。本研究は、このような問題の解決のために、様々なレベルの学生に対し予習段階で共通の知識を習得させることを可能にするオントロジーを活用した学習者適応型予習用コンテンツを現場の教員が無理なく作成できるための手法を開発することを目的とし、具体的には、以下の3項目の実現を目指した。 ① 情報系基礎科目を題材とした反転授業のための学習者適応型予習用コンテンツの開発 ② 予習用コンテンツの課題をより初歩的な課題に展開するためのオントロジーの開発 ③ 反転授業のための学習者適応型予習用コンテンツ作成の一般的手法の開発 平成27年度は、基盤となる実験システムを開発すると共に、大学初年次の情報系基礎科目を題材に、学習者適応型予習用コンテンツおよびそのオントロジーを開発し、実際の授業に活用し、その評価・改善のための基礎的な情報を収集した。 平成28年度は、平成27年度に収集した情報の分析に基づき、開発したコンテンツの改良を行うと共に、適用科目を拡大し、幾つかの理工系基礎科目のコンテンツの開発を行った。また、適用科目の拡大に合わせて、オントロジーを大幅に拡充した。それらを元に、最終的に、現場の教員が無理なくコンテンツを作成できる手法を取りまとめた。コンテンツは、当初は反転授業を強く意識した予習用という位置づけであったが、研究を進める中で、対面授業、事前・事後学習のいずれにおいても活用できるものに拡張された。また、オントロジーは、当初は既存のオントロジーの活用も考えたが、学習のためという特質から独自開発を行った。このような当初想定との相違点はあるものの、概ね、計画通りの成果をあげることが出来た。
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