研究課題/領域番号 |
15K12425
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00342684)
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研究分担者 |
赤間 啓之 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (60242301)
松下 慶太 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80422913)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 能動的学修 / 授業実験 / 学習者特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、能動的学修の教育効果を客観的に測定し、教育効果を予測するモデルを作ることである。本年度は、実授業および授業実験を踏まえた教育効果測定方法の検討、モデルの試作、及び脳活動測定実験の準備を行った。 まず、教育効果のモデルとして、教育方法や課題だけでなく、学修者自身あるいは学修者間の相互作用を考慮する必要があるか、実授業を用いて検討した。能動的学修を導入した授業を選択する学生は、選択しようとしない学生よりも、そのような授業で扱われる内容に高い価値を認め、自らの能力にも期待が高く、幾つかの行動特性が優れていることが示された。また、同一教材、同一内容を用いて能動的学修を行う場面を設定しても、学修者集団によって主観的に経験する内容が大きく異なることもわかった。これらの結果は、教育方法と教育効果の関係だけでなく、学修者自身の態度やスキル、さらには学修者自身の主観的な経験が、学修に大きく影響する可能性を示唆している。 そこで、学修者自身による能動的な主観的経験に着目することとした。英語前置詞の学習を題材として、グループ学習の中で、各学修者の経験を統制した授業実験を企画し、実施した。説明を受容するだけの群(受容群)、前置詞の示す状況を能動的な行動によって示す群(行為群)、他者の行為を観察する群(観察群)を比較したが、有意な差が見られなかった。行為群の実験参加者が、学修時に能動的に行為をしたことは教授者からも他の学修者からも確認できていたが、その効果は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、教育手法と教育効果の関係を検討し、認知的課題分析を経て、学修者の認知モデルを作成する予定であった。しかし、学修者自身の影響が非常に大きいことがわかった。言い換えれば、教授者が能動的学修をする課題や機会を設けたかどうかだけではなく、そのような機会に、学修者が参加するかどうか、参加したとしても真に能動的に活動したかどうかが重要であることがわかった。学修者が真に能動的な認知的活動を行ったかどうかは観察できないため、学修者の主観的経験の代わりに、客観的に観察可能な行為経験を比較する授業実験を行った。しかし、有効性は確認されなかった。別の手法、あるいは別の授業内容を検討する必要がある。 授業実験によって有効性が確認された課題を用いてfMRI実験を行う予定であったため、未だfMRI実験が実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、別の授業実験を実施し、再度、観察可能な行為経験を比較することで、学修者の主観的経験を捉え、その効果を検討する予定である。 脳活動測定として、当初は、授業実験で有効性が確認された課題を用い、その課題における脳活動を測定する予定であった。しかし、同じ課題であっても学修者の主観的経験が異なる可能性があること、そしてその影響が大きい可能性があることから、予定を変更する。 学修時および思考時の学修者の主観的経験を、脳活動として直接捉え、検討して行く予定である。つまり、学修時の脳活動を測定することで、学修者の主観的(心的な)経験を客観的に観察する。適切な主観的経験(脳活動)に対してリアルタイムでフィードバックを与えることで、適切な主観的経験が増加し、学修効果が高まるか検討する。現在、実験準備中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
fMRI実験が実施できなかったため、fMRI装置の使用料金及び実験の実験協力者謝金相当が残金となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
先述の脳活動測定実験を実施する。現在、実験刺激等の作成中である。
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