研究課題/領域番号 |
15K12427
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
赤倉 貴子 東京理科大学, 工学部情報工学科, 教授 (80212398)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | eテスティング / eラーニング / 遠隔教育 / 個人認証 / 筆記認証 / 顔認証 |
研究実績の概要 |
本研究は、ペンタブレットとディスプレイ上部に取り付けられたwebカメラを利用して、eテスティングを実施している全ての時間において、個人認証を行うことを目的として、ペンタブレットで筆記情報、webカメラで顔情報と姿勢情報を取得する。事前登録顔情報が1枚しかない状態であると、受験中の顔情報が姿勢や頬杖といった状態で認証精度が落ちるため、受験中の初期は事前登録顔情報と受験中の顔情報を比較して認証を行うが、受験が進行するに伴い、登録顔情報を更新していく方法論(更新法と称す)を検討した。平成28年度は、以下の点を明らかにした。 (1)t~t+Δ間で事前登録顔情報と受験中の顔情報(入力情報)の類似度が複数求められたとき、それらの類似度の中で最も高かった結果のみを判定に用いる方法を検討した結果、Δを大きくすることで精度が向上した。また、他者情報による更新を避けるために、更新における重み付けの方法について検討した結果、重みをつける関数の種類によって、認証精度に差異が見られた。また更新法で得られた複数の類似度について、それらの最大値のみを判定に用いると、認証精度が向上した。 (2)どのようなタイミングで顔情報を取得すると精度よく個人認証ができるかを実験的に検討した。その結果、マウスやキーボード等の機器に入力があったタイミングで認証精度が高まることを確認し、それらのタイミングに限定して更新を行うことで、他者情報による更新を避け、精度が向上した。 (3)さらに顔全体を認証するのではなく、鼻の位置情報に基づいて顔領域を切り出す方法について検討した結果、顔全体よりも顔検出精度が10%程度向上することを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顔認証精度を上げるために、登録顔情報と逐次的に変化する入力顔情報を比較する際の方法論について検討した。 登録顔情報を、逐次的に入力顔情報で更新していく方法を前年度より検討しているが、平成28年度は、顔情報の取得タイミングだけではなく、重み付け方法を改良し、関数によって認証精度に差異を認めることができたことから、新たな認証手法につなげることができると思われた。さらに、顔の中では、「鼻」の部位が、頬杖などの影響を受けにくく、鼻の位置情報から顔領域を検出することができたので、今後、この鼻の位置情報を利用すると、より姿勢変動に頑健な手法を開発できると思われた。したがって、顔情報利用と姿勢変動に頑健な方法論については、ほぼ当初の目的を達成しつつある。しかしながら、筆記情報は元々精度が顔情報よりも高かったことから、28年度はその検討が十分ではなかった。そのため、当初の計画以上に進捗したとまでは言えないが、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
顔認証における顔情報の取得タイミング、登録顔情報の更新タイミングについては、ほぼ結論が出つつある。平成29年度は、こうした顔情報の利用に、筆記情報を組み合わせる手法を完成させる。筆記情報については、動的情報(ペンタブレットから取得できる、筆圧、ペンの仰角、方位角など)だけでなく、筆跡情報(静的情報)を何らかの視点で「情報」として加えられるようにする。また、28年度に明らかになった鼻の位置情報から顔領域を切り出す方法を完成させ、これをeテスティング独自の顔情報取得方法としてモデル化する。すなわち、入室時の顔認証等のように、認証する人の協力が得られれば、鮮明な顔情報を取得することができるが、テストの受験時には、受験者に対して筆記情報、顔情報を認証しやすくするように求めることは、テストの目的から考えて不可能かつ不適切である。つまり、教育目的独自の顔認証方法論が必要なのであり、最終年度となる29年度は、その理論モデルを提案したい。その上で、実験的にそのモデルの有効性を示し、今後のeテスティングやeラーニングの個人認証技術の嚆矢となるようにすることが目標となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データを管理するためのデータ保存用消耗品(SSD等)の購入に、費用が若干足りなかったため、次年度の予算と合算して、次年度最初に購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究はおおむね順調に進んでいるので、28年度の残額(27,861円)は、次年度に繰り越して、データ保存用機器(消耗品)を購入する。本来の29年度分については、当初の計画通りに実施する予定である。
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