医学教育における統計教育の効果や時間的効率の向上を目指して,次の機能を有するシステムの試作を行い,実用化に向けての課題について検討を行った. 医療に関する統計分析の事例をエピソードとし,問題に用いるストーリーとデータを抽出してデータベース化し,そこから問題を生成するアルゴリズムを開発した.具体的には,統計分析の事例や練習問題の中から,平均の差の検定,分散分析に対象を絞り,関連するエピソードとして収集した.データベースを構築するために,収集したエピソードから問題を作成するために必要な要素として,ストーリー,データ,条件を抽出した. 構築したエピソードデータベースから単純な問題を生成するアルゴリズムを開発した.練習問題の条件を指定し,データベースから問題が生成される.また,学習者が回答する分析の種類,計算方法を条件として指定すると,問題文とサンプルが生成されるシステムを試作した. 今回の試作により,実用化に向けての課題が明らかになった.エピソードからのデータベースの自動構築は,エピソードで扱っていない分析に対しても,その内容を適用するためには,エピソードの文脈の解釈が必要になるため,単純な構文解析では対応が難しいことが明らかになった.また,サンプルの自動生成には,さらに細かいアルゴリズムが必要であることが分かった.試作したシステムでは,データベースに保存された統計量からランダムに発生させたが,正解を先に決め,正解に合致するサンプルを生成する必要がある.分析ごとにサンプル発生の計算方法を検討する必要があることが分かった. 提案方法による,問題作成データベースの構築,問題の作成が可能であることは,確認されたが,統計問題の作成に特有の課題も明らかになった.これらの知見をもとに,さらに研究をつづけ,実用的なシステム開発に活かしていきたい.
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