研究課題/領域番号 |
15K12433
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40154075)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生命概念 / 創発 / メカニスム / 生物学史 |
研究実績の概要 |
生命が示す創発性をどのように理解すべきか,という生命基礎論の重要課題に対して,これまでにないアプローチで臨むことを本研究の主要テーマとしている。本年度は昨年度に引き続き,文献データベースの整理と分子生物学の発展における創発の扱い,さらに広く生物科学の歴史における創発的概念の扱われ方などを検討した。 1.XMLを利用した生命科学文献データの整理とそこに現れた創発概念の検索:昨年度にはBaseXというソフトウェアを利用して,生命関連の主要雑誌の最近10年分の論文情報を整理したが,本年度は,さらにこのデータベースを拡充し,本格的に検索が可能なものにした。詳細はここでは省略する。 2.分子生物学黎明期における創発の扱いについて,ジャック・モノーの研究史を例として,未公開文献を調査するということを,昨年度にも行ったが,本年度にもパリのパスツール研究所を訪ね,詳しい調査を行った。昨年訪ねた際には改修中であり,十分な調査ができなかったが,今年は立派な施設が完成し,多くの未公開資料を調査することができた。 3.パリにある高等師範学校ENSのミシェル・モランジュ教授と二度にわたりディスカッションをし,教授の2016年の著作『生物科学の歴史』の翻訳を通じて,生命科学の歴史における機械論的概念と生気論的概念との相克の歴史を改めて浮き彫りにした。 以上,本年度は,生命の創発的概念に関わる本研究の中核的な部分に関して,計算科学的な面と生物学史的な面の両面から,新たな知見を蓄積し,研究を推進することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように,当初計画した研究を着実に実施している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,これまでの研究をまとめるとともに,異なる2種類の生物の合体による進化として知られる細胞内共生説を題材として,生物学的新奇性の創発に関する考え方を整理したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたフランスでの資料調査が,パリでのテロ事件等の影響もあり,日程調整が遅くなり,滞在が短くなったことが一因である。ただし,かなり集中して作業したので,さしあたり必要な資料を調べることはできた。また,論文投稿がずれ込んで遅くなっているのももう一つの理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は,さまざまな論文を投稿する計画で,それに必要となる費用の支出が見込まれるので,大きな問題は生じないと考えている。
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