研究課題/領域番号 |
15K12437
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
長田 敏行 法政大学, 名誉教授 (10012519)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 加藤竹斎 / 植物扁額 / 西洋画 / 洋学 / 植物画の系譜 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、明治初期に東京大学附属植物園で活動していた画工「加藤竹斎」の制作になる扁額は長いこと忘れ去られていたが、長田が再発見したことから、これを手掛かりに明治初期にどのようにして植物技法が確立していったかを明らかにし、植物画法成立黎明期の姿を探るものである。 これは洋学と西洋画の導入とがその背景にあるので、まずその大まかな流れを追及した。平賀源内がその萌芽を作り、司馬江漢が具体的な第一歩を踏み出し、その後明治初期の高橋由一へとつながるとまとめられるが、これと洋学の進展とはある関係を持っていると推定される。洋学進展の主要なきっかけは解体新書であり、そこに平賀源内らにより啓発された小田野直武が図を描いていることは、進展の方向を判断するのに示唆的であり、この背景の追跡も行った。ところが、狩野派を出身母体とし、昨年度までにすでに長崎で活躍した川原慶賀に影響を受けているとみることができると報告した加藤竹斎の画風は、日本で展開していった一般的な西洋画の画風とは一線を画していることから、その差異を明確にし、その経緯の追及は意義あると考えるので、その方向でのまとめを行う必要があると判断された。 なお、今年度はイギリス王立キュー植物園を訪問し、元園長であり、イェール大学学部長のSir Peter Craneも同行されたので、関連する資料の探索を行ったが、直接関連する資料は見いだせなかった。ところが、竹斎扁額を最も多く保有するベルリン-ダーレム植物園ではこれまで知られていなかった扁額様であるが、図を欠くやはり明治期に横浜で制作されたボードを発見することができた。これは先方の植物園でもその存在が知られていなかったもので、新知見をもたらすことができた。したがって、扁額のさらなる追及は重要であるという認識をもったので、調査の範囲をさらに広げる必要があると判断された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで全く情報のなかった加藤竹斎扁額の成立の基礎とその背景を相当程度に明らかにすることができた。また、ベルリン-ダーレム植物園で竹斎扁額様であるが、画を欠く新しい扁額を発見することができたことは、なお研究の余地があることを明瞭に示している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにその制作の意図も不明とされてきた加藤竹斎の扁額の制作過程とその背景を明らかにすることができたが、更に扁額の探索を行い、全体像を解明する。その一つの標的は、Edward S. Morseの膨大なコレクションを残しているアメリカPeabody博物館であるが、これまで長期にわたり博物館の改修ということでコンタクトを取れなかった。最近、対応の窓口を紹介いただけたことから新たな調査の可能性を追求すべく準備しているので、ぜひ実現したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度1月に予想外の入院(19日間)があったので、予定した調査出張を1回中止したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
幸い健康上は問題ないことが判明しているので、2017年4月以降に、予定した調査出張を遂行予定である。
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