| 研究課題/領域番号 |
15K12439
|
|---|
| 研究機関 | 北海道大学 |
|---|
研究代表者 |
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 講師 (60452546)
|
|---|
| 研究分担者 |
川上 和人 国立研究開発法人森林総合研究所, 野生動物研究領域, 主任研究員 (50353652)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
| キーワード | コラーゲンタンパク / 種同定 / 遺跡出土動物骨 |
|---|
| 研究実績の概要 |
土井ヶ浜遺跡1号人骨（通称「鵜を抱く女」）と共伴した鳥骨をコラーゲンタンパク分析により同定するために、現生の日本産鳥類を中心にコラーゲンタンパクのトリプシン切断断片のピークリスト作成を進めている。今年度は以下の実験をおこなった。
１．動物園や野鳥公園、保護センターなどに依頼して検体を提供いただき、日本産鳥類を中心にコアホウドリや、オジロワシ、ライチョウ、エトピリカなどの希少種を含む17目35科64種の骨格標本を作成した。
２．当初、哺乳類骨のコラーゲンタンパク分析をおこなったBuckley et al (2009)の方法に基づいて飛行時間型質量分析計（TOF-MS）を用いたピークリストの作成を試みた。しかし、この方法ではノイズが多く、良好なピークが得られなかったため、コラーゲンタンパクの抽出方法の見直しをおこなった。
３．抽出方法を改良した結果、カモ科、カイツブリ科、アビ科、ペンギン科、アホウドリ科、コウノトリ科、フラミンゴ科、カツオドリ科、ペリカン科、サギ科、トキ科、ツル科、クイナ科、ノガン科、カモメ科、タカ科、フクロウ科、ハヤブサ科の18科32種でトリプシン切断断片の良好なピークリストが得られた。得られたピークには特定の科あるいは特定の複数の科に特徴的に出現するものが含まれていた。さらに科内の3種以上で良好な解析結果が得られたサギ科、タカ科、フクロウ科といった分類群では、特定の属あるいは種のみに認められるピークも複数検出された。これらのことから、骨中のコラーゲンタンパクのアミノ酸配列は鳥綱の科内あるいはより低次の分類群内においても変異があり、これらのピークを利用して科あるいはより低次の分類群を単位とした遺跡資料の同定に利用できると考えられた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格標本の作成を進め、分析試料を増やすとともに、先行研究の分析方法を改良して、良好なコラーゲンタンパクのトリプシン切断断片のピークリストを得られる実験方法が確立できた。また、得られたピークには特定の科あるいは特定の複数の科に特徴的に出現するものが含まれており、これらのピークを利用して科あるいはより低次の分類群を単位とした遺跡資料の同定に利用できることが確認できた。研究期間の最終年度にあたる2017年度に、実際に「鵜を抱く女」と共伴した鳥骨を分析・同定するための、試料の収集および分析方法の確立ができている。
|
| 今後の研究の推進方策 |
分析対象とする現生骨標本の数を増やすとともに、特定の分類群で特異的に検出されたピークを対象にアミノ酸配列を決定し、ピークの違いが同じアミノ酸断片の配列の変異に由来するかどうかを検討することで、コラーゲンタンパク分析による鳥類骨の同定基準を確立する。また、実際に「鵜を抱く女」と共伴した鳥骨からコラーゲンタンパクを抽出してピークリストを作成し、同定する。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
分析方法を改良する必要が生じてしまったため、コラーゲンタンパクの抽出および飛行時間型質量分析計による測定を一度にたくさんのサンプルを対象におこなうことを控えた。このため、当初の予定と比べて、試薬代と共通利用機器の利用料金が減少し、次年度使用額が発生した。
|
| 次年度使用額の使用計画 |
コラーゲンタンパクの抽出にかかる試薬代、および共通利用機器である飛行時間型質量分析計の利用料金として使用する。
|
