研究課題/領域番号 |
15K12440
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
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研究分担者 |
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (30456636)
沖津 進 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (70169209) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大型植物遺体 / 考古植物学 / 気候変動 / 土器圧痕 / 植生史 / 生物季節 |
研究実績の概要 |
先史時代の日本では降雨期が時代とともに変化し、土器作成や食料採取、植物栽培などの生業に大きな影響を与えたと考えられる。そこで本研究は、季節による植物の形態変化に着目し、植物遺体や土器圧痕の植物の状態が示す季節を特定し、洪水堆積物の堆積時期や土器作成時期を推定することを目的とする。本年度は、主に季節推定が可能な植物とその器官についての情報抽出作業を行った。茨城県南部花室川と三重県南部薗川の最終氷期最寒冷期堆積物に含まれるマツ科針葉樹の、葉がついた状態で化石となった当年枝の状態から、化石群が形成された季節の推定をおこなった。春から夏にかけての成長期の当年枝は見あたらず、夏季よりもむしろ冬季の積雪や風雨によって枝が落とされた可能性が高いことがわかった。このことから、最終氷期最寒冷期には、夏季モンスーンの勢力が弱く、風雨の強度は現在ほどは大きくなかったことが推定された。さらに、後期完新世の夏季モンスーン強度の変遷について、中国南部Donnge Caveの石筍酸素同位対比曲線と対応させながら、北海道石狩平野や猿払湿原の泥炭層中の大型植物遺体から湿原の古植生変遷を復元した。この結果、夏季モンスーン強度が弱くなった時期と、湿原の泥炭形成開始や高層湿原化がほぼ対応していることが明らかになり、中国のモンスーン指標が日本の広い地域に適用できることがわかった。鹿児島県指宿市の古代の橋牟礼川・敷領遺跡の古墳・平安時代の火山灰堆積物に含まれる植物の印象葉化石群の組成や状態に基づいて化石群形成過程を復元した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、季節推定が可能な植物とその器官についての情報抽出作業を十分行うことが出来た。現在収集中の土器圧痕に関する情報は他の科研プロジェクトに参加しながら収集しているため、情報抽出が若干予定よりも遅れている。一方、本科研とは別に研究を行ってきた北海道の湿原の形成過程の研究から、夏季モンスーン変動の詳細な復元とそれにともなう植生変遷が明らかになってきており、本研究に成果を適用できることがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
堆積物からの植物遺体資料の抽出を継続するとともに、土器圧痕資料についても、他の科研プロジェクトで蓄積された資料からの情報収集を行う。北海道の湿原形成過程の研究結果から得た夏季モンスーン変動のデータと、遺跡出土植物遺体の堆積季節情報とを比較しながら研究を進める予定である。橋牟礼川遺跡の火山灰中に含まれる植物遺体のフェノロジーから火山灰の堆積季節や堆積環境を推定する論文や、花室川、薗川の植物遺体の堆積環境についての論文をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に大型植物遺体の抽出を終えて年代測定委託を行う予定だった最終氷期堆積物の分析が進まなかったため、次年度に測定委託を行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
最終氷期堆積物および遺跡堆積物の年代測定を中心に使用する計画である。
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