三角縁神獣鏡などの出土青銅鏡は、古代における文化、交易、技術などを知るための多くの情報を持つ。そのため、成分分析は有効な手段のひとつとされるが、通常、破壊を伴う分析方法は許されない。かといって、表面が厚い腐食層に覆われている出土青銅鏡は蛍光X線分析による定量評価も困難である。本研究では、青銅鏡の金属組織が構成元素及び含有量と密接な関わりを持つことに着目し、金属組織から成分分析を試みる。 まず、部分的に焦点の合った複数の組織画像を一平面上に合成(3Dタイリング)し、主体となる金属相を抽出、それぞれの相面積比から主要構成元素(銅、錫、鉛)の成分比を算出する。分析精度向上が最大の課題であり、多くの青銅資料からデータを蓄積するほか、検証鋳造実験を実施、金相評価、定量分析によってこの画像解析定量分析法の早急な実用化を目指す。 これまで、奈良県黒塚古墳出土三角縁神獣鏡33面の金属組織を非破壊で取得したほか、泉屋博古館所蔵の古代中国の青銅鏡についても同様の観察を実施した。また、銅鏃のように、表面が鏡面になっている青銅器についても、観察を行い、金属組織を取得できることを見出している。そして、これらについては、蛍光X線を用いた成分分析も同時に実施した。一方、画像解析定量分析法の測定原理確立のため、錫含有量を変化させたCu-xSn-5Pb (x= 5~28)鋳造合金を試作した。これらは、切断、研磨し、金属組織の取得まで行っている。今後、アルファ相、共析相の成分データをEPMAを用いて分析していく予定である。
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