研究課題/領域番号 |
15K12446
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
竹内 孝江 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (80201606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微生物由来揮発性有機化合物 / 真菌 / アンビエントイオン化質量分析 / DART / セスキテルペン / イオン移動度スペクトロメトリー / MVOC / カビ代謝物質 |
研究実績の概要 |
古墳のような一般環境中にある文化財は、カビの繁殖による損傷のおそれがある。遺跡にある文化財の損傷を防ぐためには、カビが繁殖すると直ちに対策を講じることが求められている。我々はカビが発生するニオイ物質に着目し、ニオイ物質の高感度計測ができれば、たとえ見えないところでカビが発生しても早期発見が可能であると考えている。 このような発想に基づいて、大気圧において前処理なしで操作できるアンビエントイオン化技術とイオンモビリティ技術を利用した文化財保全のためのポータブルで簡易なカビ臭検出器の開発を目指す。本挑戦的萌芽研究では、イオン移動度とアンビエントイオン源とのインターフェースのための基礎技術と、カビ臭物質のスペクトルデータからカビ種を同定するソフトウェアの構築を目的としている。 平成27年度に試験したDirect Analysis in Real Time(DART)質量スペクトル装置では、感度がよくなかったこと、また、感度を向上させるためにコロナ放電をアシストさせたためスペクトルに多くの分解イオンが出現したことから、ニオイ物質を特定解析が困難であった。さらに、培養培地由来ピークが大きかったため対象とした真菌Penicillium paneumの小さなニオイ物質ピークを隠してしまうという問題点もあった。そこで平成28年度は、より感度のよい検出器と連結したDART Orbitrapシステムを構築し、土壌由来真菌の代謝物質の計測、ニオイ物質の同定に成功した。4種の真菌の培養は、培地由来物質の影響をさけるため液体培養ではなく、寒天培地を用いたものに変えた。従来SPME-GCMS測定で検出された代謝物質だけでなく、新たに有機酸も検出することができた。さらに分子イオンの精密質量測定とMS/MS測定を行うことによりニオイ物質同定の確度を著しく向上できた。大気圧イオン化MSMS測定は奈良女子大学既設のイオントラップ型MS装置を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.アンビエントイオン化IMSであるDART-IMSのインターフェースを作成した。 2.ニオイ分子の収集装置を作成した。 3.DART-Orbitrapによるカビ臭データベースを作成した。研究計画書に書かれた4種の真菌のカビ臭データベースを作成できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.カビ臭のテータベース作成 真菌の揮発性代謝物質であるMVOCのアンビエントイオン化スペクトルのデータ、GCMSスペクトルデータ、イオン移動度データからなるニオイ物質のスペクトルデータベースを構築する。Aspergillus nidulansのセスキテルペン環状化酵素に関連すると予想される数個の遺伝子のノックアウト株のニオイ物質のスペクトル解析をし、真菌A. nidulansの二次代謝物質の生合成過程を検討する。 2.奈良の文化財収蔵庫から資料収集しデータベース化する方法を構築する。
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