研究課題/領域番号 |
15K12448
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部, 指導研究員 (90421916)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 出土木製品 / 保存処理 / 乾燥剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、特別な機材や薬剤を必要とすることなく、簡易で安価な水浸出土木製品の「乾燥法による」保存処理方法として、乾燥剤を用いた出土木製品の凍結乾燥(以下、乾燥剤凍結乾燥法と称す)の有用性に関して研究を進めている。平成28年度は、氷点下において乾燥剤と共に密閉保管した水浸出土木製品およびその環境変化を調べることを目的として、氷点下に乾燥剤と共に密閉保管した水浸出土木製品の寸法および重量と密閉容器内圧力の変化について検討をおこなった。 供試試料は、針葉樹(スギ)と広葉樹(アカガシ亜属)の出土木材である。乾燥実験は針葉樹から実験片1点、広葉樹から実験片2点を作製し、実験前の三次元形状計測と飽和重量測定をおこなった。その後、3点の試料を上皿天秤に載せ、1,000gのa型シリカゲルと共にガラスデシケーターに密閉し、-30°に設定した業務用冷凍庫に納めた。デシケーターコックを装着し、そこからシリコンチューブ経由しマノメーターを装着した。不定期に重量の変化を記録し、ある程度の期間を経た時点でデシケーター内の真空度を測定した。 重量減少は開始直後は緩やかで、7日経過後から急激に進み、16日目から再び緩やかになった。以降緩やかに減少する傾向を示した。16日目以降46日目前後まで徐々に庫内温度が低下すると共に、試料の重量減少は緩やかに進行した。46日目以降は庫内温度がほぼ一定になると共に試料の重量減少がさらに緩やかになった。以降はほぼ一定の割合で減少が続いた。重量減少に伴う密閉用器内の圧力変化を調査するため、27日経過した時点で圧力測定をおこなった。その結果、外気圧と141Pa(1.0575Torr)の差圧を確認した。僅かな減圧状態にあった。 水浸出土木材の乾燥に要する期間は木製品の樹種や寸法、含水率に応じて異なると考えられる。引きつづき、木製品の樹種や寸法、劣化状態に伴う乾燥の特性把握を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な実験は順調に進んでいる。情報収集のため実験を繰り返しおこなっており、データが蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータを基に乾燥のための的確な方法を検討する。外形のみならず木材中の組織の変化の有無についても具体的な把握を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎実験の見直しにより実験資材が変更されたため、一部費用が変更となった。当初見込んでいた外部研究者との打合せもメールなどによる情報交換によって研究遂行が可能であったため、当初計画の旅行が実施されなかった。以上の理由から、次年度残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
基礎実験を繰り返しおこなっており、必要となる資材を順次調達する。研究協力者らと実資料を確認しながら打合せを密に行うため、各地との往来のため旅費を利用する。
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