博物館収蔵資料は、実物の一次資料と、複製、写真、図面などの二次資料に分類されることが一般的である。博物館における一次資料の派生物としての二次資料の多寡、あるいは二次資料の利用頻度として、学術刊行物以外の印刷刊行物その他の派生製作媒体を、博物館三次資料と概念化し、その利用件数を指標として、地域の社会的アイデンティティ形成への寄与度を測定する。 そのための事例研究として、博物館収蔵資料、主に考古資料が大衆消費文化の典型として指標にあげた商業出版物マンガの中に登場する事例の集成を行った。その対比として学校教育における検定教科書に登場する博物館収蔵資料、主に考古資料の事例の集成を前年度に続いて進めた。また商業出版物について関連書、特に美術書についても同様の集成を進めた。博物館収蔵の一次資料の多くは、標本として1点1点に固有の意義があり、展示等の手段で公開することで、それらの資料の有する意義をひろく周知されるが、資料保存の都合等で公開を制限せざるを得ず、その代替として出版物などで、二次資料の果たす役割は極めて大きい。マンガ等の大衆消費文化を構成する出版物に図像化された博物館収蔵資料は、博物館の展示を介して標本の実物をスケッチしたものはほとんどなく、美術書等の商業出版物に掲載れた二次資料を介していることをデータベースに整理した。 現在、考古資料は戦後に日本史を記述する標本の役割を担っているが、それに平行するかたちで戦前から原始美術として商業出版物に取り上げられ、考古資料の周知化に寄与したことも関連して推測された。その波及効果として、美術作品として海外の博物館に収蔵されている考古資料がある。海外で出版された美術の商業出版物には、海外の博物館収蔵の日本出土の考古資料が掲載されており、それ自体の周知のみならず、日本への理解に寄与する波及効果が想定され、美術と関わる考古資料の追跡が必要である。
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