研究課題/領域番号 |
15K12452
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 高 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (80221852)
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研究分担者 |
河本 大地 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (10454787)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 扇状地 / 上流域 / 土砂流出 / 災害 / 地域 |
研究実績の概要 |
扇状地が発達している地域を複数取り上げて、上流域における土砂の生産と流出、および土砂の堆積域における土砂害や水害について検討を行った。最初に、広汎な文献レビューを通じて得られた概括的なデータを用いて、全球における土砂流出と地形・気候・テクトニクスとの関係を検討した。次に、日本、台湾、フィリピンについて、降雨イベント、斜面崩壊、土石流、および扇状地などの低地における土砂の堆積について、気象観測データやデジタル標高モデル(DEM)などを用いて分析した。さらに、過去の豪雨で斜面崩壊や土石流による被害が甚大だった広島市などの扇状地について、上流域の地形特性と崩壊の発生位置との関係を検討した。 東京都の開析扇状地を含む地域について、ゲリラ豪雨などに起因する洪水の発生を、高解像度のDEM、道路データ、および人工知能の一つであるランダムフォレストを用いて解析し、地形と道路網から洪水の発生を予測するモデルを作成した。また、長野県東御市の開析扇状地について、過去の火山の形成史と扇状地発達の関係、および果樹園などの土地利用と地形との対応を検討した。長野県については、地形による流域の分割と社会的な地域区分の関係についても検討を行った。さらに、オマーン内陸部の小扇状地とその上流域において詳細な地形・堆積物の調査を行い、扇状地における過去の堆積や湛水と、有史時代以降の土地利用について検討した。 扇状地と上流域の地形的特徴と形成過程について、広く社会に流布されている誤解を指摘し、その背景を探る学会発表を行った。また、環境・防災に関連した地域の持続可能性と、それに関する教育のあり方を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間続く研究の初年度であることを考慮し、背景の理解としての検討や、試行的な内容を含む多様な研究を試みた。その結果、一定の成果を挙げたと考える。一方で、内容がやや拡散しているという側面もあるが、今後重点を絞る予定である。また、研究の内容の相互関係を考察し、最終的には行った研究を統合的な成果につなげられるように工夫する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は多様な検討を行ったが、今後は対象をより絞った検討を進める。H28年度は特に、長野県東御市において、扇状地の形成過程、土地利用、気候条件および防災に関する詳しい検討を重点的に行う予定である。また、初年度に行った台湾やオマーンに関する研究論文を現在投稿中である。このような研究の成果の発表を、論文の投稿および国際・国内学会での論文投稿などを通じて積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた物品の購入や旅費の一部の経費が、校費など他の研究費から調達できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
長野県東御市などにおける現地調査を精力的に行う。その際には、新たに気候学に関する連携研究者に参加を依頼し、気候も考慮した検討を行う。また、地域に関する資料として重要な市史等の資料の購入も積極的に行う。さらに2016年8月に北京で開催される国際地理学会議などの場で成果の発表を行う。
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