研究課題/領域番号 |
15K12453
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 祐樹 東京大学, 空間情報科学研究センター, 助教 (60600054)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空間情報 / 携帯電話 / GPS / ビッグデータ / 人流 / ジオデモグラフィックス / 統計 / 按分 |
研究実績の概要 |
近年、携帯電話キャリア等が保有するGPS測位情報をもとにした大規模な人流データ(以下GPSデータ)が利用可能になりつつある。これらのデータは日本全国の人流情報を毎日、時々刻々と蓄積・把握出来る。これは従来の人流情報では成し得なかった。一方で個人情報保護の観点から各人の属性(例えば年齢、性別、所得、勤務形態等)は秘匿されている。そこで本研究ではこうした各人の様々な属性を、既存の各種統計・空間データを組み合わせることにより推定する手法を開発する。また同データを統計化することで、時々刻々と変化する空間的な人口とその分布・移動状況、人々の属性を推定できる新しいダイナミック(時系列)な人口統計である「人間活動統計」の実現を目指す。 平成27年度は以上の目的を達成するために、まずGPSデータから滞留点を抽出する技術の開発を行った。GPSデータそのものは携帯電話のGPS測位情報(各人のIDと測位時間・経度緯度のみ保有)しかもっていないため、まずそこから各人の自宅、勤務地、訪問地を推定し、各人の属性を明らかにする手法を開発した。空間的・時間的に近接状態にある測位点同士を結合することで滞留点を抽出し、また滞留点のうち空間的に分布する頻度の高い地域を抽出することで、各人の自宅・勤務地の推定を行った。更に国勢調査や経済センサスと比較することで同手法がある程度の信頼性を持っていることが明らかになった。 続いてGPSデータから得られる各人を実数に拡大推定するための拡大係数を決める手法を開発した。自宅・勤務地の位置と国勢調査、経済センサスから得られる居住者数・従業者数を按分することで自宅と勤務地両方の性質を反映できる拡大係数の設定を実現した。 さらに現在は自宅位置とジオデモグラフィックスから得られるその地域の属性から、各人の自宅属性を与えるためのデータ整備を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していた以下の項目①~④(①GPSデータから滞留点を抽出する技術開発、②滞留点を自宅、勤務地、訪問地に分類する技術開発、③抽出した自宅、勤務地の信頼性検証、④拡大係数の信頼性検証)についてはほぼ予定通り実施された。 また以下の項目⑤については当初予定していたものよりも充実した内容を実施することが出来た(⑤各人の実数に拡大するための拡大係数を設定する技術開発 >当初予定では国勢調査のみから行う予定であったが、経済センサスも併用することで、自宅と勤務地両方の性質を考慮できる拡大係数を実現した。)。 なお以下の項目についてはデータ整備に当初予想していた以上の時間を要しているため現在も進行中であり、完了は平成28年度中にずれ込む予定である。 ・自宅位置とジオデモグラフィックスから得られるその地域の属性から、各人の自宅属性を与えるためのデータ整備
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はまず現在進行中の「自宅位置とジオデモグラフィックスから得られるその地域の属性から、各人の自宅属性を与えるためのデータ整備」を出来るだけ速い時点で完了させる。続いて滞留点を更に詳細に分類する(鉄道やバス待ち、買物行動など)。これは駅やバス停の分布データや、商業集積統計と組み合わせることで実現可能と考えている。以上の処理を同年度上半期に実施し、各人の自宅・勤務地・訪問地全てに属性を与えることを目指す。 続いて同年下半期では各人の属性推定と人間活動統計実現への具体的な検討に着手する。まず以上の結果から各人の属性を推定するためには、以上の結果を長期間(1年365日分を想定)に渡って集計する手法が必要になる。さらにこの結果を用いてクラスタリングを行うことで、各人をいくつかのグループに分類し、各グループを構成する人々の情報をもとに各人の属性を推定する。以上でGPSデータから得られる人々それぞれにその人の属性を与えることが出来る。最後に人間活動統計実現に向けた検討を行う。まず各人の属性付きGPSデータを空間的・時間的に分割し、ある時間帯にある地域に分布する人々の情報を把握できるようにする。そしてそれらを構成する人々の属性を集計する手法を検討する。そして同集計手法を用いて人間活動統計を試作し、ダイナミックに変動する新しい人口統計のデザインを提案する。
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