近年、携帯電話キャリアが保有するGPS測位情報をもとにした大規模な人流データ(以下GPSデータ)が利用可能になりつつある。これらのデータは日本全国の人流情報を毎日、時々刻々と蓄積・把握出来る。一方で個人情報保護の観点から各人の属性(例えば年齢、性別、所得、勤務形態等)は秘匿されている。そこで本研究ではこうした各人の様々な属性を、既存の各種統計・空間データを組み合わせることにより推定する手法を開発する。また同データを統計化することで、時々刻々と変化する空間的な人口とその分布・移動状況、人々の属性を推定できる新しいダイナミック(時系列)な人口統計である「人間活動統計」の実現を目指す。 当初計画では平成28年度中に本研究は完了する予定であった。しかしGPSデータが巨大(3年分で約300億レコードのビッグデータ)なため、データ処理が想定よりも長時間となってしまった。また当初利用する予定であったジオデモグラフィックスデータがライセンスの関係で利用不可能になったため、別のデータの調達を行う必要が出た。そのため本研究期間を1年間延長とした。 その結果、平成29年度上半期には代替となるジオデモグラフィックスデータの調達が完了し、各人に同データに基づく属性を与える処理が実現した。そして下半期には本研究の締め括りとして、人間活動統計実現に向けた検討を行った。まず各人の属性付きGPSデータを空間的・時間的に集計(1kmメッシュ四方×1時間毎×365日分)した時空間メッシュを構築し、ある時間帯にある地域に分布する人々の情報を属性ごとにその割合を把握できるようにした。そして時空間メッシュをクラスタリングすることで、人間活動統計の試作が実現した。その結果、世界的にも類を見ないダイナミックに変動する新しい人口統計のデザインを提案した。なお本研究期間中には間に合わなかったが、同成果の論文化も進めている。
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