本年度は、整備済みの論文および引用文献データベースの更新作業をおこない、2015年までの『地理学評論』掲載論文を対象としたデータを完成させた。また、引用対象文献の著者の性別などの情報の追加作業も進めた。これと並行して、近年のオンライン化/オープンアクセス化の影響を評価するために、同じく日本地理学会が刊行する『E-Journal GEO』について、創刊号からすべての論文および引用文献情報を収集し、データベース化した。得られたデータの集計・統計分析を進め、地理学の引用文献における書籍の影響力の大きさや、地理学評論および他主要誌の被引用数の減少傾向、また翻訳文献の被引用数増加といった特徴を明らかにした。すなわち、過去数十年の間に引用文献の特徴には変化がみられ、それが地理学の専門分化や細分化などと関連している可能性が示された。また、引用主体と引用対象の著者間の関係についても分析を進め、同年代の著者や同じ性別の著者による文献を引用しやすい傾向がみられることを確認した。さらに、先行研究にならい論文の学際性を複数の指標により把握したうえで、学際的論文の特徴(著者・論文属性ならびに被引用数など)との関連性を分析した。最終年度までの研究において、地理学の知識生産の歴史的変遷を把握するための基礎的データを収集・提示し、学際性にかかわる自然と人文の境界/融合的な研究の特徴についても科学計量学的な分析を進めた。研究成果の論文化・書籍化については研究期間終了後も進めていく予定である。
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