研究課題/領域番号 |
15K12460
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳浦 睦憲 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10263120)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組合せ最適化 / ロバスト最適化 |
研究実績の概要 |
技術革新に伴い,大量の情報資源を有効に利用する必要性が高まってきた.この目的において重要な課題の多くが組合せ最適化問題として定式化できるが,応用上重要な問題は大規模化・複雑化してきている.しかしNP困難性に代表されるように,多くの組合せ最適化問題に対し,問題規模が大きい場合,厳密な最適解を得ることが極めて困難であることが知られている.このような問題を現実的に解決する方法として様々な最適化手法が提案されてきている.厳密な最適解を求める手法である分枝限定法や動的計画法,最適性の保証はないが良質の解を効率良く求めようとする発見的解法などである.最適化手法のほとんどは,入力データが既知のものであるという前提のもとにアルゴリズムが設計されている.しかし,多くの現実問題において入力データには曖昧さや不確定要素が内在している.たとえば,渋滞予測に基づいて平均所要時間最短のルートを選んでも最も早く着くとは限らない.このような例では,到着後には渋滞情報が過去の情報として確定しており,それ基づいて選んだルートの善し悪しが判断できる.したがって「計画段階で別のルートを選んでいればもっと早く着いたのに」と後悔することのないような計画が望まれる.そこで,このような入力データの変動に大きく影響されないようなロバストな解,すなわち変動の組合せによって生じ得るどんな場合に対しても後悔の度合いが小さい解を得るようなアルゴリズムの開発が望まれている.また,開発したアルゴリズムが有用であるためには,大規模なデータに適用できることが望ましい.このような問題を解決するためのアルゴリズム設計の方法論の確立と,効率的なアルゴリズムの開発を研究目的として研究を進めた.本年度はロバスト性の基準としてΓロバスト基準を取り上げ,汎用的な性質を証明するとともに,Γロバストナップサック問題を取り上げ,一定の成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討中の手法が有効であることを確認し,アルゴリズム設計の方法論を確立するために,本年度は,これまで多くの研究がある区間シナリオ基準よりも現実に近い状況をモデル化したΓロバスト基準の最適化問題を対象として,Γロバスト組合せ最適化問題に対して一般的に成り立つ性質に関する知見を得た.また,基本的的な組合せ最適化問題であるナップサック問題に対するΓロバスト最適化の手法の開発を進めた.ナップサック問題は,要素に対する利得と資源に対する要求量,および容量が与えられたとき,容量制約を守るように要素を選ぶときの総利得を最大化するという問題である.代表的なNP困難問題のひとつであり,詰込みという基本的な構造を有しているため,応用も多い.この問題に対して厳密解法を提案した.また,Γロバスト基準の性質を精査することにより,厳密解法の効率化を実現するアイデアを提案し,計算実験によりその効果を確認した.理論的解析についても実験的解析についても概ね順調に成果が得られたと考えている.また,他の代表的な組合せ最適化問題についても,ロバスト最適化への拡張を目指して基礎的な問題構造の検討を行っており,異なるタイプのロバスト最適化問題に対しても一定の成果を得ている.より一般的な問題への応用については今後の課題であるが,基礎技術の開発と解析に関しては,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
ナップサック問題に対するΓロバスト最適化に対する理論的性質の解明はある程度進んだので,今後はこの問題や類似の構造を持つ問題を解くための最適化手法として,反復型の探索手法を中心として研究を進める.数理計画手法を利用した基礎的な発見的解法については既にある程度検討はできているものの,反復改善型の解法についてはまだ検証があまり進んでいない.近似解の精度に関する理論的性質についても,tight exampleの構築や解析結果の改善などについてさらに検討を進めたい.厳密解法として,ベンダーズ分解法や分枝限定法に基づく手法によって一定の成果は得られているものの,性能をさらに高める工夫を行いたいと考えている.また,反復型の探索手法としてメタヒューリスティクスに基づくアイデアの検討も進めたい.そのようなアルゴリズムにより,厳密解法よりも大規模な問題例に適用でき,より実用的なものが設計できると考えている.また,そのようなアルゴリズムの評価には,分枝限定法あるいはベンダーズ分解法の計算過程で得られる上界あるいは下界の情報を利用する予定である.さらに,このタイプのロバスト最適化の手法をより一般的なものにするため,スケジューリング問題のように応用上重要な他の問題にも研究対象を広げていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度にロバスト最適化問題の中のΓロバスト最適化に関する理論的解析を進めてその解析結果に基づいて厳密解法および近似解法を開発し,その結果を国際会議で発表する予定であったが,検証実験の結果,当初の想定よりも領域計算量が大きくなってしまうことが判明した.そこで,計画を変更して解法の設計指針を見直し,領域量が小さいことが予想される解法の設計を行う必要が生じたため,想定以上の時間を要することとなったため,未使用額が生じた.
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