技術革新に伴い,大量の情報資源を有効に利用する必要性が高まってきた.この目的において重要な課題の多くが組合せ最適化問題として定式化できるが,応用上重要な問題は大規模化・複雑化してきている.しかしNP困難性に代表されるように,多くの組合せ最適化問題に対し,問題規模が大きい場合,厳密な最適解を得ることが極めて困難であることが知られている.このような問題を現実的に解決する方法として様々な最適化手法が提案されてきている.厳密な最適解を求める手法である分枝限定法や動的計画法,最適性の保証はないが良質の解を効率良く求めようとする発見的解法などである.最適化手法のほとんどは,入力データが既知のものであるという前提のもとにアルゴリズムが設計されている.しかし,多くの現実問題において入力データには曖昧さや不確定要素が内在している.たとえば,渋滞予測に基づいて平均所要時間最短のルートを選んでも最も早く着くとは限らない.このような例では,到着後には渋滞情報が過去の情報として確定しており,それ基づいて選んだルートの善し悪しが判断できる.したがって「計画段階で別のルートを選んでいればもっと早く着いたのに」と後悔することのないような計画が望まれる.そこで,このような入力データの変動に大きく影響されないようなロバストな解,すなわち変動の組合せによって生じ得るどんな場合に対しても後悔の度合いが小さい解を得るようなアルゴリズムの開発が望まれている.また,開発したアルゴリズムが有用であるためには,大規模なデータに適用できることが望ましい.このような問題を解決するためのアルゴリズム設計の方法論の確立と,効率的なアルゴリズムの開発を研究目的として研究を進めた.本年度はロバスト性の基準として最大後悔最小化を考慮した一般化割当問題を取り上げ,一定の成果を得た.
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