研究課題/領域番号 |
15K12470
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
田中 健次 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 教授 (60197415)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リスクマネジメント / リスクアセスメント / レジリエンス工学 / モニタリング / 想定外事象 |
研究実績の概要 |
従来行われてきた想定事象のリスク評価ではなく、想定外事象の発生に対応する仕組みや体制、能力を判断するための「リスク対応体制の評価の方法」を考えることが、本研究の目的である。初年度は、主に大規模システムを対象とした管理体制に焦点を絞り、主に2つの方法でアプローチした。 第一には、机上でレジリエンス・高信頼性組織との関連性を整理することを試みた。レジリエンス工学で主張されている、予測外事象に対する対処、監視、予見、学習の4つの能力の必要十分性を検討し、それらを発揮できる仕組みや体制のあり方を考察、リスク対応の能力評価に結び付けることを考えた。また、不測の事態への対応力を有する高信頼性組織の特徴等を整理し、対応評価のための具体的項目を検討した。 第二には、大規模システムの管理組織へのヒアリングを行った。特に、(1)事故後の対応能力と(2)予兆管理能力、の二点に着目して聞き取り調査を行った。 原子力プラント関係者には、主に事故後の対応能力に関して、意思決定権の委譲関係や緊急時の対応体制について、現在取り組んでいるポイントなどを聴いた。航空管制システムの関係者からは、予測管理能力に関してヒアリングし、緊急事態発生の予兆管理やそれらを回避するための能力、指導者である教官による指導ガイドラインなどについて、情報を収集した。医療分野に関しては、ウィーンで開催された医療系の安全会議に参加した際に、大規模病院での管理に関しての情報を、参加者からヒアリングすることができた。また、事故や災害発生時の対応の必要性を考える上で、避難シミュレーションの活用も念頭に置き、そこでの分析手法も検討した。 これらの情報を整理し、リスク評価の枠組みにつなげるべく、検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
第一の机上でレジリエンス・高信頼性組織とリスク評価との関連性に関しては、書籍や文献を基に既に提案・主張されている観点を整理することで進めているが、一方で、真の問題点を、既に発生した東日本大震災時の事故対応やその際の事故調査資料から抽出することで、評価ポイントを検討している。大量の情報はあるが、それらの整合をとることでやや苦労している。 第二の大規模システムの管理組織へのヒアリングに関しては、原子力プラント関係者、航空管制指導員などから聞き取りできる機会を得たが、もう少し時間をかけて、繰り返しヒアリングをすることが必要である。後半、急病により、少しの間、研究ができない時期が発生したため、予定していた訪問調査などができない状況に陥ってしまった。もっと早い段階から、それらを進める計画を立てるべきであった。 1年目で到達すべき目標点には達せず、引き続き、その目標に向かい研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、製造業に目を向ける予定であったが、1年目の大規模システムの運営・管理におけるリスク対応体制の評価のあり方について、残された問題に取り組むことから始める。 それらの成果がまとまり次第、製造業に対象を移し、製品安全に関する想定外事象への対応体制について考える。特に、製造企業でのヒアリングでは、使用状況のモニタリングやデータ収集とリスク予想、さらには判断の仕組みに焦点を当てる。それらの結果から、評価項目を整理し、1年目から継続したシステム管理におけるリスク対応体制との相異を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予期せぬ病気入院治療により、予定していた国内長期出張、海外出張が取りやめになる等、十分な活動ができなかったために、平成28年度に経費使用を回した。28年度は海外出張も予定しており、1年目に遅れた内容を取り戻すべく計画を立てている。
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次年度使用額の使用計画 |
前半に、国内出張によるヒアリングを計画、秋の海外出張にて海外でのヒアリングを行うなど、1年目の遅れを2年目に取り戻す予定である。
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