研究課題/領域番号 |
15K12471
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
神田 幸治 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30288047)
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研究分担者 |
嶋田 博行 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (50162681)
秀島 栄三 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50243069)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / 警告音声 / 避難行動 |
研究実績の概要 |
本研究では,昨年度に検討したように,一般市民に対する警告音声の認知特性及び印象特性を検討することを目的とする。特に地震,水害などの災害時や突発的に発生した事態に対し,公共放送や施設内放送,携帯端末などからの緊急音声に対する認知特性を,実験心理学や安全人間工学の立場から精緻,実証的かつ総合的に検証し,状況認識モデルに基づく知覚,認知レベルで考察,モデルを提起し,心理学的立場からの実証データに基づく適切な警告や情報提供のあり方を模索することを試みる。 そのため平成28年度には,警告音声に関する印象特性実験のプロトタイプとして前年度に実施した視覚的津波ピクトグラム実験をさらに分析した。実験では独自に考案された津波ピクトグラム50種類に対して,先行研究を基にして構成した質問項目を用いた評価主成分分析の結果より,ピクトグラムの評価軸として避難行動喚起度と視認性の2つの軸が抽出された。その内容を6月に開催された日本人間工学会にて発表し,実験方法の改善や警告音声研究への展開などに関して,今後の研究の発展に有益な知見が多数得られたため,警告音声に関しても避難行動喚起度と音声明瞭性の評価軸が存在することが示唆された。 また前年度に引き続き,資料調査により警告音声に関する特性の抽出を試みた。そして,その避難呼びかけに関するキーワードや発話スタイルを用いた警告音声に関する認知実験を実施するための実験プログラムを検討し,実験の準備及び環境構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画で示されたように,平成28年度は警告音声に関する予備調査及び予備実験に先立ち,その方法を検討するために,パラダイムとして確立している視覚的刺激を用いた実験を通して,ピクトグラムによる津波避難行動喚起に関する評価を実施した。実験より,聴覚的な警告音声に対する評価尺度を策定するための有効な結果が認められたとともに,避難行動を喚起するための有効な津波ピクトグラムに関する有益な知見が得られた。 しかし,平成28年には熊本や鳥取などで大きな地震が継続的に発生し,災害発生時を仮定した実験や調査が参加者に災害の現状を想起させ,心理面やデータにネガティブな影響を与える可能性があった。そのため平成28年に予定されていた実験遂行を保留せざるを得ず,本研究の進展がやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度で得られた結果をもとにして,今後は警告音声に関する評価実験を実施する予定である。はじめに質問紙調査により,様々な警告音声を通して避難呼びかけに関する印象特性を検討したうえで,行動レベル(「どのくらい迅速に行動するか」など)との関係を検討する。さらに,平成28年度で検討された実験室実験により警告音声に対する注意パフォーマンスを検討し,調査結果と実験結果を基盤として,避難呼びかけ時の音声傾向に関する認知的問題について,モデル化をはかることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度で実施する計画であった調査や実験に一部変更があり,平成29年に実施することとなった。また,学会や研究分担者との打ち合わせのための旅費が,別予算から支出されたことにより,平成28年度の未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では,平成28年度に予定されていた調査及び実験に必要な消耗品や,調査及び実験実施の際の諸経費(印刷費や謝金など)に繰越分を使用する予定である。
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