これまで研究代表者らは,配管やタンクのような薄板状材料に対し遠隔からのレーザ照射により弾性波を励振して,その励振点を走査することにより内部に発生した損傷を画像化する技術を検討してきた. 本研究では,その画像化手法に用いる受信センサとして,マイク,アンプ,バッテリを内蔵したスマートセンサを開発した.スマートセンサは,薄板からの漏えい波を受信するため,対象材料の近く(例えば50cm以内)に置く必要がある.しかし,スマートセンサにブルートゥーストランスミッターを装着することで,センサユニットを一度対象物近くに設置すれば,その後はすべてリモートでの計測が可能になることが示された.また,MEMSシリコンマイクを使った場合には,弾性波励振用のレーザの散乱光がシリコンマイク表面に当たることで,光起電力や熱弾性効果によるノイズが大きく現れた.このノイズは,マイクユニットをプラスチックケースで覆うことにより解決されるものの,信号レベルも低下することから,今後検討が必要である. それとは別に,配管内に水のような輸送流体が接している場合のガイド波伝搬の数値シミュレーション技術を開発した.これにより,擬似SHOLTE波と呼ばれる流体が接している場合のみに現れる特有のモードが出現することが示された.このモードは流体中への漏えいによる減衰がなく速度分散性も小さいことから,上述のスマートセンサを利用した計測手法との組み合わせによって効率的な配管の検査への応用が期待できる.
|