研究課題
市民マラソンなどの大規模スポーツ催事の際での心肺停止事故は、一定の頻度で発生する。発生頻度は低いにも拘わらず、心肺停止事故が起こった場合の地域にかかる負荷は大きい。リスク予知には、心電図解析が一般的だが、屋外やスポーツイベントでの運用には限界がある。とくに雨天時を含む野外での測定や、集団での同時記録や解析には不向きである。複数の電極を貼り付けないといけない煩わしさもある。心臓拍動より周波数の低い呼吸運動に着目し、体導音センサや加速度計センサを使用することで周囲の気候変動や発声・騒音などにも強く、且つ大量データ解析が可能な装置を開発中である。本研究では、マラソン大会の更なる安全性を確立するため、 “集団での呼吸数の変動”を用いて、心肺停止事故のリスクを算出することを目的としている。初年度は、医療者のみならず非医療従事者でも簡単に呼吸評価の出来る医療機器を開発すること、この装置を用いて患者の呼吸数を在宅にて遠隔監視するシステムを構築することを目標とした。【実績の概要】1.体導音センサを用いた患者の呼吸の調査、2.臨床治験実施計画書作成、並びに倫理委員会審査判定 平成27年10月20日承認、3.携帯型体導音センサ臨床測定用プロトタイプ(非防水型)完成、4.呼吸と循環の二波長を用いた患者生存確認と遠隔情報管理、5.スマートフォンを用いた呼吸と心臓の二波長計測が可能なアプリを開発、6.市民マラソン大会での体導音センサを用いた呼吸数の計測
1: 当初の計画以上に進展している
研究当初はスポーツイベントや病院内の一部の患者のみの測定予定であったが、今年度より病院で訪問診療や往診が始まり、その中心を総合診療科にて担うこととなり、倫理委員会の承認後より在宅でも測定を開始したところ、病院内よりも信頼性の高いデータを測定することができた。加えて測定装置の改良により、初年度目標であった“医療者のみならず非医療従事者でも簡単に呼吸評価の出来る医療機器を開発すること”に関しては、進展度は高いと考えられる。
誰でも簡単に測定可能な呼吸数という新しい指標を、湿度や気温変化といった気候の変動や集団変動を同時に記録・解析し、危険予知をリアルタイムに数値化するアルゴリズムを作成することで、呼吸数を使った指標が、スポーツ、災害、在宅、遠隔医療といった他の医療分野へ応用することを検討している。また、スマートフォンを利用した通信システムを構築することで、呼吸&心拍数のビッグデータを集積・解析することで災害医療現場にも貢献することが予想される。
体導音センサを使用したプロトタイプが初年度から予想を超えて廉価に仕上がったことと、呼吸数測定に関しては信頼できるデータが取れたこと、加速度センサに関しては、当初は既製品の加速度センサの使用を考えていたが、スマートフォンに高精度かつ、使用しやすい加速度センサが既にビルトインされていることが分かり、アプリの開発のみで測定可能となったことが大きな理由である。
健康器具として開発するのではなく、あくまで災害や医療現場で使用できる高品質な機器開発を進める。現在は当院総合診療科にて在宅医療での使用を進めているため、多くの機器と、医療従事者にも納得できる機器とその管理通信システムを構築することに予算を使用して研究を推進する予定である。
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Int J Cardiol.
巻: 192 ページ: 30-32
10.1016/j.ijcard.2015.05.004. Epub 2015 May 6.