2013年,日本国内で風力発電用の風車が破損する重大事故が続けて発生した.京都府伊根町の太鼓山風力発電所では,風車上部が折れてナセルがブレードごと地面に落下した.これまでに,ナセルが地面に落下した事故は前例が無い.これまでの我々の研究成果から,風車重大事故の主要な原因が,地形起因の「乱気流(地形乱流)」であることが分かってきた.風車近傍の地形起伏や地表面粗度の急変に起因した「乱気流(地形乱流)」は,風車のタワーやナセルを「振動」させ,金属疲労を著しく進展させるとともに,発電出力にも多大な影響を与える. そこで本研究では,「乱気流(地形乱流)」の発生機構を明らかにし,「風車振動」との相関性を明確化することを試み,上記内容に関して新たな知見を得ることに成功した.研究代表者は,電力会社や風車メーカー,風力発電事業者と定期的な意見交換を数年間実施し,本テーマの必要性を強く感じてきた.本テーマは,風力発電を適切に普及・拡大させる上で,工学的・社会的に解決が急務な最重要課題である.本研究では,研究代表者が開発を進めている先端的数値風況予測モデル(詳細は後述する)を研究開発のコア技術とし,これに対して新規に①詳細地形データおよび気象GPVデータの活用による計算精度の向上,②GPGPU技術の導入による大規模計算の高速化,③風車ブレードが回転する効果を考慮した,より現実的な乱気流の力学的発生メカニズムの解明と,風車振動との相関性の明確化を試みた.上記の研究課題への取り組みは風力発電業界では初の試みである. また同時に,地形乱流と風車が回転することに伴い発生する乱気流の両者が複合する場合も検討を加えることに成功した.
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