研究課題/領域番号 |
15K12478
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
服部 邦彦 日本工業大学, 工学部, 教授 (90261578)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リモートセンシング / パッシブレーダ / アクティブレーダ / マイクロ波 / 送電線検知 |
研究実績の概要 |
本研究では従来のアクティブレーダ法にくらべ安価なシステムで小型軽量の装置を構築すべく、空中高圧送電線を検知するための新しい手法としてパッシブレーダ法を用いた方法を提案した。初年度では以下のことを実施した。 1.受信器の製作:低雑音・高利得の高周波回路を実現するために製作を業者に委託した。基本的な回路部品は、市販のBS受信器に使われている既存部品と技術を用いており、アンテナで受信した電磁波をへテロダイン検波を行い中間周波数をRFアンプで増幅した。そして最終的には3つの出力信号(音で確認できる可聴音信号、生のRF信号、100Hzバンドパスフィルタを用いたDC検波出力)を取り出した。実験内容によって、これらの出力信号測定が使い分けられるが、100Hzの検波出力はDC出力のため実用的には電圧計やオシロスコープで受信レベルを容易に測定することができる。なお、この受信器は小型(230mm×200mm×50mm)・軽重量の上、バッテリー駆動のため持ち運びが容易で屋外使用が可能となっている。 2.測定システムの構築:BS用パラボラアンテナ(直径370mm)を真上に向け掃引装置(速度可変、測定範囲500mm)に固定しアンテナの自動掃引制御およびデータ収集のためのシステムを構築した。アンテナの掃引制御はできたが、掃引と同時にデータを収集するまでのシステムには至らなかった。 3.初期実験:検知装置システムを用いて、蛍光灯を送電線に見立て位置の検出を試みた。その結果、数m離れたところに設置された蛍光灯からの電磁波放射が受信できた。データ解析プログラム等はまだ完成に至っていないため詳細な定量評価まではなされていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
受信器を製作するのにあたり、その要求性能を満たすための設計・製作時間を要したため研究の進捗が遅れている。受信器の詳細な性能評価に関してはまだ実施されていない。しかしながら当初計画案どおり受信器の製作は終了した。 現在、送電線を模擬する室内実験を開始しはじめたが、データ収集、解析プログラムの開発が遅れている。さらに、掃引装置の配置や室内実験システムにもまだ改良の必要性があり、様々な実験条件で実施するのが困難である。これらの受信器周辺の測定環境整備が遅れている。しかし、定性的ではあるが、この受信器を用いて、当初の研究目的を遂行できることの見通しは確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
屋外の高圧送電線に適応する前に実験室内で実験検証を行うための基礎実験システムを引き続き整備する。特にデータ収集および解析ソフトウエアの整備を行っていく。 ハードウエアの課題として、アンテナの掃引装置を改善しアンテナ方向を任意の場所に向けて測定可能にする配置や測定対象との距離を変えられるようなシステムを構築する。これらの測定システムを構築した後、実験条件を変え様々な条件で測定を行う。そして詳細なデータを取得し、受信器性能や検知法の実用性について評価検討を行う。 昨年度は実施できなかった他の検知方法(アクティブレーダ法、レーザ計測、写真計測など)もあわせて実験準備を行い、本研究手法と比較検討する。現在は、測定対象として蛍光灯を用いた検出を行っているが、高圧送電線で実際に使用されているケーブルは入手しているので、このケーブルを使用した室内実験も試みる。その結果を踏まえて屋外の送電線測定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況が、当初予定よりも若干遅れたこと、現在所持している機材を使用したことなどにより、当初計画額が消化されず次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
先の「今後の推進方策」にも記載したとおり、当初目的を達成するために引き続き測定システムの整備を実施していく。その中で、今年度は、データ収集に既存のオシロスコープなどの機材を使用していたことに代えパソコンに直接A/D変換器を組み込み、測定データの収集効率の向上ならびに装置のコンパクト化を図ることなどに前年度予算を使用する。掃引装置もさらに改良するために前年度予算を使用する。
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