研究課題/領域番号 |
15K12481
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
盛川 仁 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60273463)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水晶振動子 / 加速度計 / 地震動 |
研究実績の概要 |
平成27年度には,実用化されたばかりのセンサー(以下では,現行品と呼ぶ)を用いて,その特性を検証するために,センサーをトンネルに設置してセンサーの長期安定性の検証をはじめたが,平成28年度もそれを継続的に実施した。また,測定の実施にあたって作成したデータロガーシステムの改良に着手した。特に,センサー側の出力がasciiコードをシリアル経由で出力する方式から,バイナリコードをシリアル経由で垂れ流す仕様に変更されたため,通常のシリアル通信では通信速度が不十分でデータの取りこぼしが生ずることが明らかとなった。そのため,取りこぼしたデータはそのまま飛ばして読み込み,その間は適宜補間するアルゴリズムの構築を始めたところである。
従来のセンサーでは20℃程度で水晶振動子の温度感度が低くなるように水晶がカットされているが平成28年度には恒温槽に水晶をいれて安定動作させるために,60℃程度で温度感度が低くなるような水晶のカット形状を検討した。平成28年度は人工水晶から水晶の切り出しを行ったので,実際のカットは平成29年度に実施し,温度安定性について検討する予定である。
また,上記と並行して現行品を用いることにより,実際の構造物に取り付けて微動による構造物の微小な振動応答の測定を実施した。地盤上での微動と異なる構造物の応答によって振動が増幅されるため,水晶振動子によって十分な精度で記録が得られることが明らかとなったが,詳細な解析は平成29年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現行品の水晶振動子は20℃程度で安定動作するように構成されているが,温度が大きく変化すると精度が大きく変化する。現行品はキャリブレーションによってその問題を回避しているが,その手間とコストは大きく,本研究では恒温槽に入れることで温度特性の問題を回避しようとするものである。水晶のカット形状によって温度に対する特性が変わるため,現行品をそのまま恒温槽に入れるよりも,適切な形状にカットしたうえで恒温槽に入れることでより高い精度の出力が得られることになる。どのようなカットが適切であるかを検討し,実際にカットする段階に達している。
また,実際の観測のフィールドを選定し,構造物への設置,観測も現行品を用いて実施している。
上記より,ほぼ当初の予定通り進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
水晶を60℃程度で安定して動作させることができるよう,実際に水晶をカットして,恒温槽内に実装しOCXO (オーブンコントロール型水晶発振子)を作成するとともに,温度コントロールなどの周辺回路を実装して水晶振動子として動作する試作品の作成を行う。そのうえで,実際にフィールドで測定を行い温度による精度変化などを精査する。また,それにともなって,デシメーションフィルタの改良を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工水晶から材量の切り出しに手間取って,水晶のカットを行うところまでできなかったため,それに必要なコストを次年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り,センサーの試作とフィールドでの観測を実施する。
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