| 研究課題/領域番号 |
15K12488
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| 研究機関 | 北海道教育大学 |
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研究代表者 |
尾関 俊浩 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20301947)
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| 研究分担者 |
中村 一樹 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (50725231)
高橋 庸哉 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (60236297)
安達 聖 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 特別研究員 (80719146)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | 表面霜 / 雪崩 / 弱層 / 雪氷災害 / 自然災害 |
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| 研究実績の概要 |
表面霜とは，空気中の水蒸気が積雪表面に昇華凝結して生成された霜結晶で，表層雪崩の原因となる弱層を形成する．本研究では表面霜の結晶形に関する研究と，表面霜が弱層となった場合の雪崩斜面の安定度に関する研究を行う．
本研究の特徴は自然界では希にしか生成しない表面霜を人工的に成長させて実験するところにある．表面霜は放射冷却で雪面が冷却され，湿度が高く，微風が吹いている気象条件でよく成長することが知られている．そこで人工生成装置では放射冷却に換えて冷媒により雪面を冷却し，低温風洞内で水蒸気を供給しながら霜の成長を促した．表面霜の結晶形に関する研究では，温度，温度勾配，湿度，風速により現れる表面霜の結晶形の違いと成長速度を観測した．
作成した表面霜は人工降雪で埋没させ，表面霜を挟んだサンドイッチ構造の積雪層を作成し，雪崩斜面の安定度を与えるせん断破壊試験（シアーフレームテスト）を行なった．これはシアーフレームと呼ばれる金属枠を表面霜の数 mm上部まで差し込みプルゲージで横に引いて剪断破壊させる積雪で一般的な試験方法である．破壊に要した力をシアーフレームの面積で除し，SFI（剪断強度指数）を求めた．
剪断強度の測定結果より，表面霜のせん断破壊強度は表面霜の成長とともに減少する傾向があった．また，表面霜へ降雪させる雪質によって，表面霜が同じ縦長さでも弱層として機能しない場合があることが示唆された．上記結果の原因を明らかにするために，X線CTにより表面霜層への上載積雪の入り込みを高空間分解能で撮像した．その結果，弱層とならない場合は弱層となる場合に比べて上載積雪の入り込みが多いことがわかった．これは，表面霜が成長することによりアンブレラ効果を発揮して上載積雪は表面霜層へ入り込めなくなり，弱層が形成されることと，アンブレラ効果は上載積雪の降雪種に依存することを示唆している．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3年計画の2年目にあたる．本年度は初年度に開発した表面霜を人工的に成長させる装置を用いて表面霜の結晶方位の研究と，表面霜を含んだ積雪のせん断破壊強度に関する研究を行った．実験は，小型実験装置のある北海道教育大学低温実験室で先行的な実験を行い，多くのデータを得る実験は防災科研雪氷防災研究センターの雪氷防災実験棟（CES）で行った．
表面霜を含んだ積雪のせん断破壊強度実験に関しては，雪氷防災研究センター雪氷防災実験棟において表面霜のせん断強度試験を行い，多くのデータを得ることができた．今年度の実験では冷却板を約－19℃または約－23℃に冷却して雪面への霜の昇華凝結を促進させ，14時間霜の成長を待った．風洞内は気温約－2 ℃，湿度80％以上，風速は風洞中心で1.1 m/sの環境であった．成長完了後に人工雪を4 mmメッシュのふるいで表面霜の上から降雪させ上載積雪とし，－10℃で40時間焼結させたのち，シアーフレームテストを実施した．SFI（剪断強度指数）を求めた．表面霜を含んだ積雪のSFIはいずれも表面霜を含まない上載積雪のSFIより小さくなることが示され，表面霜の層が弱層として機能していたことが示唆された．
結晶形の研究では風洞型表面霜作製装置は初年度に開発した水蒸気供給方法を移流型とした装置を用いて，一定の条件下（温度・湿度・風速）で成長させた表面霜の結晶形と結晶方位の関係を観察した．採取した表面霜はコップの一面型（Wedge Type）であり，自然界で成長した結晶の中にも同様の形の表面霜が多い．採取した表面霜は結晶表面をフォルムバール溶液で覆い，エッチピット法により，結晶方位を観察した．エッチピットが長方形に成長したことから，この成長条件で成長する表面霜は成長軸がC軸成長を中心に階段状に成長することが分かった．
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| 今後の研究の推進方策 |
2年間に行なった表面霜を人工的に成長させる実験と，表面霜を含んだ積雪のせん断破壊強度に関する研究を基に，最終年度の実験を計画する．具体的な作業としては以下の3項目が大きな柱となる．
（1）表面霜の人工生成装置を改良し，今までと異なる結晶形の表面霜に関する実験を行う．北海道教育大学低温室では水蒸気量，温度の条件を大きく変えられるので，水上気圧勾配の大きな場合，低温型結晶の場合の表面霜の成長過程を明らかにする．
（2）（1）の成果をもとに雪氷防災研究センター雪氷防災実験棟の表面霜作成装置を改良し，今までと異なる結晶形の表面霜をサンドイッチ構造とした積雪のせん断強度に関する研究を行う．破壊実験では積雪層の均一性に加えスケール効果も勘案する必要があるので，サイズの大きな実験を心がける．さらに本研究で開発した脆弱な表面霜用の軽量小型シアーフレームによるSFIについて，通常のサイズのSFIと比較検証を行う．
（3）結晶形は積雪の温度条件と上載荷重によって経時変化することが予想されるので，実験は表面霜の作成から経過時間を変えて行う．表面霜をサンドイッチ構造にした積雪はX線CT装置を用いて，継続的に結晶形と積雪の3次元ネットワーク構造の計測を行う．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
2年目に予定していた研究発表の出張および研究打ち合わせの出張が減ったことが次年度使用額につながった．一方，大型室内実験のための研究旅費は研究協力者の人数を増員したことにより増加し，また実験に使用する物品費が増加したため，結果として収支は次年度使用額29,378円が生じる結果となった．
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| 次年度使用額の使用計画 |
初年度の結果を勘案して大型室内実験の研究協力者を増員している．3年目も実験の研究協力者を2年目と同様に増員する予定であることから，次年度使用額はその目的に使用する．
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