研究課題/領域番号 |
15K12493
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研究機関 | 日本赤十字北海道看護大学 |
研究代表者 |
根本 昌宏 日本赤十字北海道看護大学, 看護学部, 教授 (50316311)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 避難所 / 寒冷 / 冬期 / 低体温症 / エコノミークラス症候群 / 段ボールベッド / シェルター |
研究実績の概要 |
平成28年度に予定していた研究項目は,1)試験用シェルター1の安全性・居住性の検証,2)睡眠計,血圧計を用いた避難所生活・就寝評価,3)シェルター1の改良,4)得られた成果の公表の計4項目である.これらについて以下に概要を記す. 1)試験用シェルター1の安全性・居住性の検証ならびに2)睡眠計,血圧計を用いた避難生活・就寝評価では,昨年度試作したシェルター1を2017年1月に仮想避難所として130名を対象に展開した.氷点下22℃のコンディション下で,暖房のない体育館内の気温は-2℃を示した.前年度表出した暖房によるCO2濃度上昇に対処するため,暖房を全く使用せずにシェルター1の評価を行った.気温は全域6℃前後で推移したが,段ボールベッドと寝袋の併用で約8割の参加者はある程度就寝できた.シェルターの中で就寝した者とシェルターの外で就寝した者との主観的な就寝状況の違いが示され,閉鎖的空間としてのシェルターの有用性が見いだされた.しかし就寝直前の血圧は平均で10mmHg程度上昇し,起床後もその値を維持したことから,寒冷環境が体にストレスを与える可能性が示唆され,今後の検討課題となった.また参加者の7割は男性であり,平均年齢も45歳であることから,高齢者等を想定するとさらに有効な手立てを考えなければならない.就寝場所の一酸化炭素は検出されず,CO2濃度は昨年度の1/2に抑えられた.3)シェルター1の改良ではさまざまなタイプの公共体育館を踏まえ,後付でも展開可能なウィンチによる展開手法を確立した.支柱のない大型シェルターは重量物であり,安全に展開することが求められる.次年度に進めるシェルター2の実施設計に向けて検討を進める.4)得られた成果の公表では,日本集団災害医学会,避難所・避難生活学会等避難所環境評価に関連する学会で発表した.第32回寒地技術シンポジウムでは寒地技術賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害対応に当たる国・都道府県・市町村の様々な部署の防災担当者との連携を図ることで,本研究の遂行と検証が実現されている.特に避難所の中で運営側として健康管理を求められる保健師との協働は,避難所で最も注意を必要とする要援護者への配慮を念頭に実証することができている.昨年度より新たに導入した段ボールベッドは,本研究で開発したシェルターとの相性が良く,外気温がマイナス20℃まで下がる中,無暖房で展開することを可能とした.また熊本地震の検証により,本研究に活かされる事例が獲得された.災害対策事案は日進月歩でめまぐるしく変化するため,今後も関係機関と綿密に連携を取りながら,より良い環境を創り出す.
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今後の研究の推進方策 |
厳冬期の環境を用い,冬期の避難所環境の厳しさを実証できている.研究を通じて明らかとなった問題点を改善すべく,次年度の研究を計画する.無暖房は究極の選択であり,実際に高齢者を護ることは厳しい.次年度は停電時においても実現可能な安全な暖気供給方法を計画に入れるとともに,より簡易により多人数を収容可能なシェルターシステムをシェルター2として開発する. 東芝メディカルの解散に伴い,睡眠計の追加購入が中断された.2017年度から販売再開のアナウンスが来ており,早急に入手したのち,睡眠の質・バイタルを把握しながら冬の避難所の原型を創り上げたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に購入予定であった胸部貼付型睡眠計(Silmee,東芝社製)が東芝社の事業委譲に伴い一時的に販売停止となったため購入することができなかった.本製品は平成29年4月より販売が再開される予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
販売再開後速やかに睡眠計の購入を行う予定である.
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