研究実績の概要 |
2014年12月~2015年3月に富山湾沿岸の2地点で観測された水位データ(波浪データ)を解析して、沿岸部の浅瀬域(水深10m~20m以下)に、うねり性波浪が侵入することにより、浅瀬域で数分周期の固有振動が生じることを確認した。さらに、2015年6月と9月に新潟港湾空港技術調査事務所の平面水槽(長さ50m,幅6m)を用いて、周期1.48秒の規則波を水平床(浅瀬域)に入射する造波実験を行い、次のことを確認した。 (1)水平床上で固有振動が生じる。 (2)長周期の固有振動とうねり性波浪が相互作用することによりうねり性波浪が固有振動と同じ周期でビートする。 (3)沖に突き出た形の水平浅瀬域(水深十数m)にうねり性波浪が侵入すると、水平浅瀬域上の岸側の平均水位がうねり性波浪の波高の1/5~1/2程度増加し、さらに、平均水位が場所によって変化する。 (4)2011年1月~2015年3月に能登半島先端海域と富山沿岸で観測された波浪データを比較することにより、能登半島先端海域において富山沿岸に押し寄せる寄り回り波を数時間前に捉えて予測することが可能である。 そして、(1)~(3)の現象は錨泊中の船舶の走錨や、居住区への越波現象の原因になっていると考えられる。そして、富山沿岸ではうねり性波浪(寄り回り波)による災害が度々発生しており、これらの災害を防止するためには信頼性の高い寄り回り波予測システムの構築が必用である。これを実現するには、能登半島先端海域で富山湾に侵入する寄り回り波を、従来の波浪計による観測だけでは不十分であり、波浪計に加えて波浪レーダを用いて寄り回り波をリアルタイムで平面的に捉えて、予測する必要がある。波浪計に波浪レーダを加えた波浪観測システムを用いて、富山湾に侵入する寄り回り波を確実に捉えることにより、直前予測を実現するシステムについて研究することは今後の課題である。
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