研究実績の概要 |
これまでの結果を踏まえ、我々はパラフィンに包埋した悪性黒色腫の標本の試料(サイ約3mm×4mm×3mm)を用い、試料中のメラニンラジカルの検出をX-バンド(9 GHz)電子スピン共鳴(ESRまたは EPR)法で試みた。得られたESRスペクトルは、小さい肩ピークを有する単一形のスペクトル(ピークからピークの線幅、約0.64 mT)が観察され、g-値や線形の解析からフェオメラニン関連のラジカルと同定した。得られたフェオメラニンラジカルは、悪性黒色腫の異なる病期の結果から病期と直接関連していると示唆された。従って、得られた結果は、今後のヒト悪性黒色腫の非侵襲的測定ならびにメラニンのフェオメラニンラジカルの詳細な解析の良い指標になり得ると考えられた。 次に、悪性黒色腫などの皮膚疾患を表面検出できる検出器の開発に取り組んだ。メラニンラジカルの濃度(ラジカル数)10E16個程度を検出できるよう様々な工夫をした表面型共振器を試作した。その結果、悪性黒色腫に内在するラジカル種を検出し解析することができた。表面型共振器の性能は、標準物質である4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)0.1 mM水溶液、5-10μLを1.0 mm(内径)ガラスキャピラリーで調べた。また、別の標準物質である1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)粉末を用いても調べた。その結果、表面型の検出器は、市販の挿入タイプの検出器よりもS/N比で約2倍弱劣る程度で十分な非侵襲検出と解析ができると分かった。
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