研究課題
本年度はGCTM-5陽性細胞を増殖・分化させる方法を探索する予定であった。しかし、単離したGCTM-5陽性細胞が数時間から数日で陽性と陰性の細胞の混在する細胞集団になってしまうこと、解離した細胞ではGCTM-5抗原はエクソソーム中に放出され、これを取り込んだ細胞が陽性となることが分かった。このため、昨年度に見出した単離方法では、GCTM-5陽性(産生)細胞のみを単離して増殖や解析の研究に使用することができないことが分かった。そこで、GCTM-5産生細胞を単離するために、この細胞に特異的な細胞表面抗原を同定することを試みた。GCTM-5陽性細胞を成人膵組織から解析に十分量確保することは困難なため、膵癌細胞を用い、GCTM-5強発現細胞と陰性細胞の網羅的遺伝子発現比較解析を行った。その結果、GCTM-5強陽性膵癌細胞では、幾つかの糖転移酵素が高発現していることを見出した。これらの酵素で産生される糖鎖抗原とGCTM-5を合わせて用いれば、効率よくGCTM-5陽性(産生)細胞が単離できる可能性が示唆された。一方で、GCTM-5陽性細胞を膵臓細胞へ分化させる方法を検討するため、ヒトES/iPS細胞から膵臓細胞への分化過程でのGCTM-5発現細胞を詳しく調べた。その結果、GCTM-5陽性細胞は膵前駆細胞の初期に発現し、一部の陽性細胞では組織幹・前駆細胞の細胞表面マーカーも発現していることが分かり、GCTM-5とこれらのマーカーを用いれば、GCTM-5陽性(産生)膵前駆細胞を単離、解析することが可能となることが予測された。また、この分化過程以降の分化誘導方法を用いれば、GCTM-5陽性成人膵前駆細胞を膵島細胞に分化させることができる可能性が示唆された。いずれのアプローチも、当初の予測できなかった発見が相次ぎ困難であったが、膵前駆細胞を単離・分化させるための知見を得ることができた。
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