研究実績の概要 |
近年,がん療法の進歩によって患者の生命予後が延長される一方で,QOLを著しく損なうがん骨転移のリスク管理も強く求められるようになっている.本研究の目的は,骨吸収抑制作用が報告されている全身性微振動 (whole body vibration: WBV) のがん骨転移の成立に対する予防効果を,マウス実験によって検証することである. 初年度は適切なマウス骨転移モデルの作製を試みた.易骨転移性を示す乳がん細胞 (4T1) をマウス (BALB/c, ♀, 8週齢) の乳腺あるいは左心室に移植し,移殖部位と移殖数によるマウス病状,生存期間への影響を調べた.これまでのマウスWBV負荷実験においてその骨への作用が3週間ほどで認められたことから,生存期間の目処を>3週間とし,また,WBVの効果検証を困難とする重度な骨破壊進展とならない移殖条件を探索した.文献調査により,移殖部,移殖がん細胞数は以下の組合わせて行った(いずれもn=5). 1.左心腔内移植:10,000 cells,2.左心腔内移植:20,000 cells,3.乳腺移植:200,000 cells,4.乳腺移植:1,000,000 cells この結果,左心腔内移植については,いずれの移殖数でも2~3週間で死亡し,胸腔内、肺、心血管周囲、胸膜に腫瘍が確認された.20,000 cells移殖では体重減少も認められた.一方,乳腺移植については,1,000,000 cells移殖で一匹のみ2週後に死亡が見られたが,体重減少は認められず,立毛やうずくまりも確認されなかった.移殖3週後の腫瘍転移は4T1細胞の好転移部位である肺,骨に確認された.本結果より,WBV実験に利用されるマウス4T1骨転移モデルとして,乳腺移殖,移殖数200,000~1,000,000 cellsとすることが適切と考えられた.
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