研究実績の概要 |
乳がん骨転移に対する全身性微振動(whole body vibration: WBV)の抑制効果を,マウス骨転移モデルを用いて実験的に検証した. <動物実験> データの信頼性を増強するため,乳がん細胞(4T1,5x10^5 cells)を乳腺に移植したマウス(BALB/c, ♀, 8週齢)を用いた実験を引き続き行った.マウスはWBV群(3群)と非WBV群(振動ケージに入れるが,振動は与えない)に分け(各群10匹),4T1細胞を移殖した翌日から,20分/日,5日/週の頻度でWBV刺激を3週間与えた.WBVの振動様式は加速度振幅0.3g,周波数15Hz,45Hz,あるいは90Hzとした.さらに,週齢を合わせた健常マウスとの比較評価も行った. <計測> 3週後に摘出した脛骨試料は固定後,SPring-8放射光施設において単色CT計測をおこなった(分解能2.74μm).骨・骨髄の体積,海綿骨体積率,骨梁幅,骨梁結合数,皮質骨空隙率,骨ミネラルを解析した.また,WBV実験後に採血し,血清から骨形成マーカー(オステオカルシン),骨吸収マーカー(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)をELISAにて測定した. <結果> 非WBV群に比べ,15および90HzのWBV群の皮質骨体積,骨梁体積率は有意に高値を示し,有意差はなかったが結合数,結合密度も高値を示した.ただし,WBVによる骨転移抑制の効果は健常骨の骨形態を維持するものではなかった.一方,45HzのWBV群ではほとんど効果が見られなかった。骨形成マーカーは90HzのWBV群で非WBV群より高値を示したが,15HzのWBV群では差は認められなかった.がん骨転移に対するWBVの作用は,周波数依存性であることが窺われた.
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